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「ねぇ、君の名前"しんこういち"って言うの?」

そう真後ろ奴にに言われて、まだかはじめだとか、お前が水瀬なのになんで前がサ行なんだとか言いたいことは沢山あったけれど、それは後ろを振り向いた瞬間に全て吹っ飛んだ。
俺の目の前に居たのはとんでもない美形様だった。

「ねぇ、聞いてる?」
「あっ、ああ、ああ!!」

なにこいつの顔!!!!!
格好いいってか、綺麗、そう綺麗なんだ。
彫りも深く、顔のパーツの位置も整っていて見つめられるとすげぇ迫力。

「ねぇ、シンコウイチくん」
「マダカハジメです」

え、そうなんだ
シンコウイチかと思った。
そんなことを呟いている俺の目の前の美形さんはとんでもないアホらしかった。

「まぁ、いいや。とりあえずよろしく。コウイチくん。」
「マダカハジメです。」

手は長身の彼に見あった大きさだった。
そんなこんなで俺はこのお馬鹿な美形、水瀬綾十になつかれた。

「ねーねーはじめちゃーん」
「………」
「はじめちゃんったらはじめちゃーん」
「………」
「はっじっめちゃー、いてっ!」
「この馬鹿野郎図書館では静かにしろよハゲ」

うるさいバカを戒めようとひとつ拳骨を落としてやると、周りから鋭い視線が飛んできた。
平凡が水瀬様に馴れ馴れしくするなってか。
水瀬は美しい顔立ちからこの閉鎖的な学園でアイドル扱いされ、既に親衛隊も出来たらしい。

ハゲてないもん、と俺に殴られた頭を押さえながら口を尖らせ文句をいう綾十。
その姿に黄色い悲鳴が、図書館だからかささやかにあがる。
最近俺について図書館にくるコイツを見にこようと図書館の利用者数が増えているらしい。
図書委員としては喜ばしい限りだが、理由が理由なので素直に喜べない。
ここは図書館なんだから本を読めよ…。
悪戯に綾十が触った本の貸し出しだけが増えていく。
「パンツは何故白いのか」とかどんな内容なんだよ…。


「はじめちゃん。ねぇ、構ってよ」
「………」
「むぅ…」


子供の様に頬を膨らませ、拗ねたことをアピールしてくる綾十。
ぶっちゃけかなりめんどくさい。
この阿呆イケメンはどれだけ精神年齢が低いのか…あそこで綾十を見つめながら「水瀬様格好いい…」とかうっとり呟いているあの子達は眼科に行った方がいいと思う。

拗ねたことをアピールしてくる綾十を無視し続けると、「もう、いいもん!」と大きく叫んで図書館から飛び出していった。
もん、ってあいつキモ…。

静かになった図書館に俺が動かすシャーペンと紙が擦れる音だけが響いていた。







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