2

連れ込まれた車はタクシーで、気付いたら恭一郎のマンションの前だった。
タクシーから降りるとそのまま腕を捕まれて恭一郎の部屋の前まで連れていかれた。
そこにつくと女は慣れたように鞄から鍵を取りだし、開けるとそのまま中に入っていった。
俺も合鍵を貰ってない訳じゃないけど俺以外に合鍵を渡していることに胸がモヤモヤした。
ここまできて尻尾をまいて逃げるわけにもいかず、恭一郎の部屋に上がった。

リビングに行くと女は居なかった。
まさかと思い、寝室に向かう。
扉を開け、室内に一歩踏み出すと同時にベッドの方へ突き飛ばされた。

柔らかいベッドの感触を感じながら驚いていると照明が付いた。
慌てて入り口の方を振り向くとさっきの女が立っていた。
ずんずんこちらに近づいてくる。そのままベッドの上に乗り、俺の上半身に自らの上半身を重ねるように近付いてくる。

「どーも、はじめまして。ずっと挨拶したかったのよねぇ。なのに、キョウったらあなたに会わせてくれなくって」

どこに自分の恋人に浮気相手を紹介するやつが居るんだ。
それより、この女異様に声が低い。

「…男?」
「あらぁ?今更ぁ?」

確かにまじまじと見れば中性的な美貌の中に男らしさがある。
喉元で存在を主張する喉仏とか。
大きな手のひらとか。

なんてことだ。女相手の浮気ならまだしも男と浮気だなんて!本当にちょっと性格悪くて性癖が歪んでるだけのやつだと思ってたのに!

「…言っとくけど、本命は俺だからな」

威嚇するために睨み付けながら絞り出すように言う。

するとソイツは一瞬ぽかんとした後に腹を抱えて笑いだした。
俺はそのリアクションにショックを受けた。
今までの恭一郎の態度を受けてアピールをしただけなのに、何故こんなに笑うのだろうか。
もしや本当の本命はコイツなのだろうか。
そんな不安が胸中を駆け巡る。

苦しそうに腹を捩らせる男に為す術もなく、ソイツの笑いが治まるのを待つ。
笑い声がだんだん小さくなっていった。

「あー、おかしかった。ごめんなさいね、あなたがあまりにも検討違いなことを言うから」
「…あんた、アイツの浮気相手じゃないのか?」
「そんなワケないじゃない!あんなやつこっちから願い下げよ!」

男の返答に安堵が胸に広がる。

「よかった」

気が緩んだのか思わず本音が漏れた。

「まー!うらやましいわね!こんな可愛い顔しちやって!あんな男のどこがいいのよ!」

そう言いながら男が抱きついてきた。
その重い身体を受け止めていると何か物音が聞こえた気がした。
…もしかして、この部屋の主が帰って来たのだろうか。
足音が近付いてくる。

「私はあんなやつよりカナちゃんみたいな子の方が好みよ」

物音を気にせずそう言って顔を寄せてくる男。
カナちゃんって俺のことか。
キモい。
いや待て、それよりこの状況はまずいだろう!
アイツが浮気してなかったとしてここでキスなんかしたら俺が浮気したことになるじゃねぇか!

俺と男の距離が0になるのと寝室の扉が開かれるのは同時だった。

Fin.


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このあとは修羅場ですね!
管理人の闘志・気力・根性が続いたら続きをアップしたいと思います、ハイ。
大変遅くなりましたが、一応これを63000hit記念作品とかえさせて頂きます。
63000hitありがとうございました!

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