岐路


クーラーで冷えた指先が忍び込んで脇腹をする。
その感覚に身を捩る。
手は徐々に上に上がっていく。
このままではやばいと思いつつ、身体は言うことをきかない。

「やっ、直人、だめ」

流されてしまえばもう元には戻れないような気がして怖くなる。
直人の胸元に手をあて突っぱねる。
離れた距離にやっとクーラーがきちんと作動していることを感じることが出来た。
じっと俺を見つめる瞳は暗く、表情も今まで見たことのないものだった。
形のいい唇が動く。

「たっつん、このまま俺に乳首弄られて友達続けるのと、俺と友達やめるの、どっちがいい?」

発せられた言葉に頭を殴られたような衝撃を受ける。
直人は大事な親友だ。
直人と絶交だなんて考えられない。

「…そんなの、卑怯だ」

俯きながら呟くと、直人が困ったような顔をしているのが雰囲気からわかった。

「卑怯で、ごめんね」

その声は俺が知らない誰かみたいだった。


答えは決まった



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