寡黙書記×会長
幼馴染み
武士っぽい










最近なんだか会長がおかしい。
随分と上の空のようで食堂で嫌いで絶対に頼まないものを頼んだりする。
それはいつの間にか俺の定食Bと入れ替わっていた。
理不尽だ、もう慣れたけど。

それに肩に手を置いたり触ると、小さく身体を震わせる時がある。
その度にまさか、とは思うけれど聞くに聞けずに数日が経った。


二人きりの生徒会室に響くのは書記の俺が書類を作成するために出すキーボードと接触する音と会長が判子を押し、書類を捲る音だけで静かだ。
しかし、その沈黙は長い間を共に過ごしてきた俺達にとっては気まずいものではなくむしろ心地よいものだった。
その沈黙を遮り、会長が口を開いた。

「なぁ…ヘンなこと聞いていいか」
「…あぁ」

内心びっくりしながら努めて冷静な声で行程を示す。
「あー…うー」と気まずげに不鮮明で意味のない音を溢す彼は珍しい。
一瞬、躊躇うようにその瞳が伏せられたかと思うと、次の瞬間には強気な瞳と目があった。

「俺がネコって変か?」

一瞬、なんのことかと思ったが直ぐに女役のことだとわかった。
彼の言葉に胸に苦味が広がる。
彼がネコの経験があるのは知っていた。
この傍若無人な生徒会長様にも人を想い健気に泣くような時期があったのだ。
そんな彼を一番間近で見て支えてきたのはこの俺だ。
好きな彼の相談にのり瞳を涙で濡らす彼に自分が泣きたいような時もあった。
しかし、自他共に認める一番の親友である俺に失恋が確定した想いを伝えることもできず、ただひたすら、敵に塩を送るように会長を慰めることしかできなかった。
結局会長の恋は相手が高等部を卒業した為に終わった。
所詮学園内での恋愛は平凡な日常を彩るための娯楽であり本気ではないのだ。
相手の方はそのつもりで会長に誘いをかけていた。
それなのに会長は本当に溺れてしまって、その後の会長は見ていられなかった。
それからもう三年がたった。
当時は儚い美少年だった会長も高等部に入学し二年が経ち端正な顔立ちはそのまま体は青年に近付き、美丈夫と呼ばれるに相応しく成長した。

あれから、三年。
俺の片想いの月日はもう片手では数え切れない。
妙な感慨に浸り不愉快な想いと淡く締め付けられる胸を感じながら、返答がないことに焦れて唇を尖らせそっぽを向く会長の元へ向かおうと作業を終わらせパソコンをシャットダウンさせる。
会長の目の前に移動するとそれにあわせて彼は顔を挙げる。
やはり恥ずかしかったようでその頬は真っ赤に熟れている。
こんな表情を見せるのは俺ぐらいだろうと確かな優越感を感じながら見惚れる。
まだ口をきかない俺に拗ねた会長が俯きながら口を開いた。

「…もういい、忘れろ」
「俺はいいと思うぞ」
「は?」

勢いよく顔をあげ、目を間抜けに見開いた会長の顎を持ち、唇にそっと自分のそれを重ねた。
一瞬の出来事に呆けた会長は無意識だろう指を唇でなぞり、そして正気に戻った。

「なっ、何すんだ、バカやろう!」

会長の怒声が響く。
このままここに居ては危険だと判断した俺は生徒会室の豪華なドアに向かう。
まだ喚いてクッションを投げ付けてくる不意打ちに弱い会長に懐かしい面影を見て口角が上がる。
ドアノブに手をかけ力を込めると同時に彼に届くよう、大きな声をかける。

「好きだ」

途端にピタリと動きが止まった会長を尻目に生徒会室を後にする。
あとからメールでも送ろう。
一斉一代の大告白の続きをするためのメールを。


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