テストが迫る某日。
俺は自室でテスト勉強をしていた。
背中にバカな恋人を引っ付けて。
「綾十…いい加減離れろよ」
「やだ」
「綾十!」
「やだやだ、やだもん!!!」
「っだー!!だから男のもんはキモい!!」

綾十は付き合いだしてから更にウザくなって更にスキンシップが激しくなった。
大体もうすぐ期末考査なんだぞ、こいつは勉強をしないのか。
忘れはしない、中間考査の屈辱。
俺はこのアホに負けたのだ。
僅か4点の差で。

正直言ってかなり悔しい。
いつもヘラヘラしてて勉強しているところも見たことがないような奴に負けるなんて…悔しすぎる。

「綾十、お前は勉強しなくていいのか」
「…いいよう!」
「はぁ…」
「あ、それよりさ、前俺が倒れた時あったじゃん!」
「あぁ…」

それは、綾十が俺を避けだして我慢できなくなった俺が会いに行った時のことだ。
このバカは風邪を引いて倒れたのだ。

「あん時はじめちゃん俺に嫌われて避けられてると思ってただろ?」
「っ!?」

なんでそんな黒歴史を掘り返してくるんだこのバカ野郎!!!!!!
日本人なら空気読めよお願いだから!!!!!!

「あれさ、実はさ中間考査近かったからさ、はじめちゃんにうつしちゃいけないって思ってさ、避けてたんだけど…」
「はぁ!?」

そんなの初耳だ!!!!!!
まじで意味がわからんコイツ…。
「…ならなんでそう言わないんだよ…ばか」

あまりの驚きに頭が真っ白になって体操座りした腕の中に顔を埋める。
ああ恥ずかしい。
コイツは俺の為を思ってたのに一人で嘆いて…うわぁ、しにてぇ…。

「あ、あれはじめちゃん…?拗ねちゃった?」
「拗ねてねーし」

自己嫌悪だし。
そっと口内に呟く。

「うー…ごめんってばー」

そう言いながら俺を覆うように抱き締める綾十。
一回りぐらい大きさが違う俺の身体はすっぽりと綾十の腕の中に納まった。

「…なんで綾十があやまんだよばか」

ばーかばーか。
俺のばか。
こんな憎まれ口しか叩けない自分が嫌いだばかばか。
そう自虐に浸っているとポロっと涙が零れた。
びっくりして思わず顔を上げる。
なんだよ…いつから俺はこんなに弱くなった。
そんな事を考えていたらポロポロと更に涙は溢れ出す。

「は、はじめ!?」
「あやと…ごめんな」
「え、何が」

訳がわからない、そんな顔でこっちを見つめる綾十。

「勝手に勘違いしてその上理由も聞かずに泣き出して…また泣いてるし…うざいよな…本当ごめん」
「ああああああああああああはじめちゃんなかないで!!!!!」

本格的に泣き出した俺に綾十は叫び出す。

「元はと言えば俺が勘違いさせるようなことしたしはじめちゃんの気を引けないかなとか考えてたし泣かないでよはじめちゃん!!!!!」
「は?」

聞き捨てならない言葉が聞こえた気がして低い声が飛び出る。

「え?」
「は?
今なんて言った?」

さっきまで溢れていた涙は何処へやら。
既に一の目は据わりつつある。
これはやばいとあわあわと反論を試みる綾十。

「あーいやー勘違いさせるような事をした俺が悪い的な?」
「その後」

往生際悪く、誤魔化そうとするが取り付く島もない。

「えっと…」
「綾十、一週間オアズケな」
「えぇっ!そんなっ…!」

防音の部屋に悲痛な叫びが響いた。


しかし、次の日には仲睦まじく寮の食堂で昼食を食べる二人の姿があった。
一の機嫌は食堂の特大パフェで治ったようだった。


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