俺の好きな人は惚れっぽい。

陽斗からの着信を知らせるため、携帯が震える。
チカチカと点滅するオレンジのライトは陽斗の好きな色。
音と振動と光で目一杯自己主張するそれに俺は手を伸ばした。
もしもし、そう素っ気なくありきたりな言葉を投げ掛ける。

「なぁなぁ拓哉!ゆりえちゃんと飲み会セッティングしたから一緒に来てくんね!?」

ゆりえちゃんは今陽斗が狙っているセクシー系の少しケバめな美人。
あんなののどこがいいんだと毒付きながら失望されないよう肯定する。

「…別に、いいけど」
「うおおお!!!ありがとな、愛してるダーリン!!!」
「…俺も愛してるよハニー」

陽斗にとっては冗談でしかない戯言に苦笑しながらも応える。
俺が本気で愛してると伝えたら一体どんな表情をするのだろうか。

『キモチワルイ』

そう言われて俺達の関係は脆く崩れるだろう。
それならばまだ、親友として側にいた方が幸せなのではないか。
そう思ってから早5年。
俺達は親友という良好な関係を保ち続けている。
いつまで続けるのだろう、この俺にとって不毛でしかなく幸せで苦しい関係を。
しかし、不毛でも苦しくても俺はこの幸せを手離せないのだ。


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