「ゲッ。またおまえかよ」

「それはこちらのセリフだ。きでんはなぜまたここにいる」

「そりゃあ元彬とあそぶためだ!」

「おれだってそうだ!」

二人はそう言い争いながら昨日、元彬と名乗った少年の元へ行くために森の中を歩いていた。

「元彬は『おれとあそびたい』っていったんだぜ!」

「やはり耳のいしゃにかかるべきだな。おれにそれはいったんだ」

「ちがうっつーの!」

言い争いをしながら森の中を歩いていると目的地に到着した。史憲はその場にドカッと座り込んで隣にいる澄信をみる。

「……おい」

「なんだ」

「おれはおまえと遊ぶなんてまっぴらごめんだ」

「おれだってごめんだ」

「……でもな」

「ん?」

「…元彬が『いっしょに』っていうならいれてやる」

「……それはおれのセリフだ……!」

二人は顔を見合わせてニッコリと笑い、澄信も元彬にあうためにその場に腰掛ける。
その時だった。

「元彬の友達ですか?」

「!」

ふいに後ろから声をかけられ、二人が振り向くと短髪の僧衣をきた同い年ぐらいの少年が立っていた。

「だれ?」

はじめに口を開いたのは史憲であった。その史憲の言葉に少年は応える。

「忌司と申します」

忌司と名乗った少年はそう言うと笑ったまま口をつぐんだ。

そんな忌司をみて澄信が聞く。

「元彬どののご友人どのですか?」

「友人……」

忌司は澄信の言葉を小さくつぶやくと

「私はあの子の──」

といった。

──がその言葉は聞き取れなかったし、問いただされる事もなかった。

彼らは次の瞬間眠りにつき、起きたときには全てを忘れていたのだから。




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