別に多くのものを望んだわけじゃない。
 俺はただ、普通の兄弟のよいに一緒にいたかったのだ、遊んだり悪戯したり、喧嘩したり、そんな兄弟なら当たり前の行為をして。
 だからそれを許さない世界を壊したいと願い、それを壊したのだ。壊した時に何か大切なものも壊れてしまったが、それよりも大切なものが手には入った。
 今の自分は、その壊れたガラクタよりもその大切なものの方が大切なのだ。

「……勝ってやる」

 行平はそう小さく呟いた。意志を強めた目が、静かに閉じられる。何かに誓うように何分か目を瞑り、ゆっくり立ち上がった。
 その立ち上がった身体には、つららと功風が先日つけた傷はどこにも見当たらなかった。






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