先程から胸騒ぎがして仕方なかった。"悪い予感"とは違ったが、だからといって"良い予感"というわけでもなかった。

(清……か?)

清の怪我の具合でも悪くなったのではないか、と思うと元彬はいてもたってもいられなくなった。

とにかくこの胸騒ぎを止めたかった。

急いで清が体を休めている部屋へ向かう。

(体調か、怪我が悪化した……か?)

そう思うと更に歩みを進める足が速くなった。



 * * *



「な、なあ……」

「なんだ? さっきからそれしか言ってないぞ」

清は大分調子が良くなり、布団のうえに正座していた。

「あの、さあ」

将は、何か言いたいことがあるのであろう、何とかして話を切り出そうとしていた。

「……」

清は将の次の言葉を待った。

(い、今だ、今この機会を逃したら次いつ訊けるか……!)

将は、清の近くまで寄り、胡座をかいた。

(……よしっ!)

覚悟を決め、息を吸う。

「清はさ、元あ……」

ドタバタと慌ただしくなる足音に、将の言葉が止まった。

そして勢い良くスパーンと襖が開いた。

「む? 清、怪我はどうした?」

そこには、思い詰めた表情の元彬がいた。

「あ……忌司様のお付きの人が治して下さいました」

「そうか……」

元彬は首を傾げる。清は何事もなかった。だとすれば、未だにおさまる気配のないこの胸騒ぎはなんなのであろうか。

「そういえば……その人が、忌司様の屋敷に来るようにと申していましたような……いないような……」

清は寝込んでいたので、記憶を曖昧だが、そう言われていたような気がした。

「そうか、ありがとう」

元彬はそう言うと、襖をそっと閉めその部屋から離れた。

「なんだったんだろうな……」

「さあ……」

二人は、元彬の護衛につくのを忘れていた。





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