ガサッと音を立て、慧たちの前に一組の男女が現れた。女は髪の毛を高い位置で一つにまとめ、二人とも着物を着ていた。

「そなた達、何者か。何故ここに居る」

女が訊いてきた。

「私は慧といいます。あなたは誰ですか? 私たちは、目が覚めたらここにいたんですけど、ここはどこなんですか?」

「目が覚めたらここにいた?」

「はい」

女は眉を潜めた。隣にいた男が、女を心配そうに見ていた。

「──そうか。神隠しにでもあったか」

そういうと女は懐から扇子を取り出し、振り上げた。

すると、するすると氷は溶けてなくなっていく。慧たちが驚いているなか、その男女は至極普通と思われる表情でいた。

「先輩、これって……!」

「魔法、か……?」

「なんだ、魔法を知らないのか?」

はっ、と彼女は笑った。その態度に碍はムッとした。

「魔法くらい知ってる……!」

「"知ってる"? 使える者はいないのか」

彼女はますます眉を潜めた。

ひゅう、と風が吹く。砂埃があがった。

砂埃が晴れると、そこには男の姿があった。

「つらら、澄信が呼んでっぞ」

「馬鹿者、澄信"様"だ」

「あいつが良いって言ったんだから良いんだよ。ったく、結界なんか張りやがって……。おかげで解けるまで待たなきゃなんなかっただろーが」

「結界?」

蒼が疑問に思ったのか尋ねた。女の隣にいた男がこたえる。

「ええ、つららが魔法の鍛錬のために張るんっス。つららは他人に邪魔されるのが嫌スからね」

そして男は続けた。

「さっき来た男の人、行平っていうんスけど、相当な魔法使いなんです。その行平でも破れない結界を通り抜けて来れる人はいないから、つららは不思議に思ってるんだと思いますよ」




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