◎4月お題で参加させて頂いた【同じ存在】の弟の話です。これだけでも話はわかると思いますが、よろしければどうぞ。







幼いころから素直ないい子では無いことは自覚していた。
父親、母親、その他の俺達双子以外の存在が俺には異様な「何か」にしか見えなくてそいつらと関係を持つことを俺が心の底から嫌悪していたから、俺の双子の兄貴以外には俺は近寄らなかったし、愛想も振り向いた覚えもない。
可愛いとか、いい子だなんて言われた覚えもないし言われたくもなかった。俺を理解できるのは兄貴だけだと信じていたから。
そしてその『夢』だけが俺にとっての幸せだったから。




【夢の世界の崩壊は】




そんな夢の世界が崩壊したのは小学校の時。
俺は生まれて初めて兄とケンカをした。
「なんでこんなことしたんだよ」
「…」
「なんか言えよ!!」
苛立ち始めた兄が机を強く叩いた。小さい頃から温厚だとか言われてきた兄は意外にカッとなりやすい性格だということは知っていたが、それが自分に向けられたのは初めてだったから、少し驚いた。
「なんで正人の筆箱壊したんだよ!!」
兄が持っている筆箱はボロボロに大破していて、もとの原型を留めていなかった。俺が壊したんだから、当然だが。
「だって正人がウザいから」
「は?」
「双子だって他人、って言ったから」
俺の言葉に兄は一瞬呆けたような顔をして、そしてしょうがない、と言うような顔をして俺の頭をなでた。
「まったく…そんなことで…」
「!!」
そんな、こと?
「なにそれ」
自分でも驚くほどの冷めた声を出していた俺に、兄はさらに驚いた顔をして俺をみた。小さな沈黙ができた。
「あ…いや俺は…」
兄が沈黙に耐えきれず口を開く、俺はそんな兄をジッとみていた。
きっと兄はいたたまれない思いをしていただろう。
でも、
「そ、そりゃあ正人の言い方も悪かったけどさ、俺はお前を大事な弟だと思っているし…」
兄より俺の方がつらかった。
「だけど【全部一緒ってわけじゃない】だろ」
全てを喪失したのだから。

◆◆◆

目の前で頭から血をながしている奴らを見下ろして、俺は昨日の雨でできた水溜まりを覗きこんだ。
そこに映るのは真面目な兄と同じ顔。けれども醜い自分の顔。
「…クソッ」
今なら、兄があの時言った言葉が正しかったことがわかる。あのころの自分はどうしようもない子供でそんな当たり前のことに気づいていなかったのだ。本当に、お笑い草な話だ。
けれどー




 君に言って欲しくなかった
(例えなにがあってもお前にはその夢をみていて欲しかった)



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