幼い頃は俺達は二人で一つだった。
一卵性双生児特有の同じ遺伝子、それゆえに似る体格や顔。
だから、今でもずっと同じ存在だと、思っているのだ。



『同じ存在』



「…また、ケンカしてたろ。裕哉」
「なに?お説教ですか?親の可愛い子チャンな誠哉オニイチャン?」
中学校になって、弟は変わった。
まず第一に姿が同じではなくなった。弟は髪を金色にそめ、俺たちがお揃いで買った服を着なくなった。
次に、学校に行かなくなった。俺が行こうと誘っても、行かず、他の友達と遊ぶようになった。
そして、弟は俺をみなくなった。俺を見ず、別の人をみて、その人と一緒に過ごすようになった。
そして俺たちの関係も変わった。
「自重しろといってるんだ。お前がケンカをすると俺に迷惑がかかる」
「はあ!?テメエになんかしたかよ!」
「…お前に間違えられて、俺が殴られるんだ」
ズキリ、と痛む、アザだらけ の腕を見せた。一瞬目を大きく見開いて、その腕を裕哉はジッとみつめた。
「…ダセ、逃げることも出来ねえのかよ。勉強ばっかやってるからこういうことになんだよ」
「…そうだな」
怒らずに苦笑いを浮かべると裕哉は忌々しい、と言わんばかりに顔を歪めた。
「『お前のせいだろ!?』ぐらい言えよバカ兄貴、本当にお前意味分かんねえよ。俺に怯えてるわけでもねえくせに」
「あたりまえだろ。俺はお前の兄貴なんだから」
そう言って笑うと、裕哉は本当に訳が分からなくなったのか、構ってられないと足早に部屋のドアへと向かった。
出て行くとき、小さな声で弟が呟いた。
「…そんなにとばっちり喰らうんなら、兄弟の縁切れば、いいのによ」
その言葉に驚いて声をかけようとした瞬間、ドアが乱暴に閉められた。
一人残された部屋は閑散として、一人だ。ということが身にしみた。
先ほどの弟の言葉が頭の中で繰り返される。

『兄弟の縁切れば、いいのによ』

「嫌いなんて言ってない」
そう呟いた言葉は誰もいない部屋に響いた。そのことが嫌で、俺は机の上に置いていたアルバムを乱暴に床に叩きつけた。

嫌いなんて言ってない
(同じ存在の痛みを分かち合うことを嫌いなわけない)



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