人が嫌いなのは人が嘘つきだからなの。と彼女は言ったのです。
「嘘つき、ですか」
「そう、嘘つきなのよ」
彼女は泣きながら僕を見上げていました。その見上げた目には涙が溜まっていました、いたのですがそれと同じくらい僕を睨みつけていたので、僕は少し怯えました。
「なぜ、僕を睨むのです」
「貴方も嘘つきの人間じゃない」
彼女はそういうとポロポロと大粒の涙を零して俯きました。そして俯いたまま譫言のように言葉を紡ぎました。
「嘘つき、嘘つき、ずっと一緒に居てくれるって言ったのに」
「あんなにも私を愛しているといったのに」
「あんな…『たった60年しか』一緒にいてくれなかった」
この森の神様である彼女はそう言って、また嗚咽を漏らしました。
僕はそんな彼女を見て不憫に思いました。だから彼女にこう言ったのです。
「その人を連れてくることはできないけれど、貴方が会いに行くことはできますよ」
「そんなこと出来るはずないわ…私はこの森から出ていけないのに」
「出来ますよ」
彼女は僕の言葉に目を見開きました。僕はそんな彼女の顔に腰に差していた剣を振り下ろしました。
◆◆◆
彼女を切った次の瞬間、森が大きな音を上げました。彼女はこの森の守り神であったのでそれはこの森の断末魔だったのかもしれません。
ですがそれとは対象的に僕の心は弾んでおりました。なぜならこの断末魔は彼女が愛しい人の元へいった証拠だからです。
「ずっと、ずっと一緒にいてください」
僕は愛しい人の元にいるだろう彼女にそう言って、今はもう死んだ森を歩き始めました。
破壊者の感情
(僕は真実の愛の手伝いをしたのだ)