君は何色にも染まっていない、白だった。







文化祭の準備で、俺は文化祭実行委員に選ばれた。女子の委員は休憩時間いつも本を読んでいる人だった。

そんなワケだから俺は彼女を正面から見たことがなく、ましてや話した事なんかなかった。

そんな彼女が、今俺の目の前にいた。

放課後の静かな教室で、机をくっつけて"文化祭で何をしたいか"のアンケート集計をしている。

「あー、何で俺がこんな事しなきゃなんねえの」

呟いただけだった。返事なんかもらえるワケないと思っていた。

「仕方ないだろ、選ばれたんだから」

だから、返って来て本当に驚いた。正直、彼女には嫌われていると思っていた。性格が真反対だからだ。

「何をそんなに驚いてんだ? まさか、私が返事をしないとでも思ったか」

彼女は外見とは裏腹に、つけんとして芝居じみた、男みたいなしゃべり方をした。

「おう、せーかい」

そう俺が言うと彼女は少し笑った。俺の見たことのない笑い方だった。少なくとも、俺の周りにこんな笑い方をする奴はいなかった。

彼女は集計の結果をルーズリーフに書き込んでいく。その字はとても綺麗だった。

「全部私に任せて、何もしてないじゃないか。それなのにそんな事を言われても困る」

そう言って俺を見た目は、澄んでいた。

「……アンタさ、イメージカラー白ってよく言われねえ?」

「……生憎だが、そんな類の話はした事がない」

唐突な質問でも、彼女は狼狽えていなかった。だがその顔は、少し寂しそうに見えた。

「そっか、でも何か白っぽいよな」

何色にでも染まれる感じが。

「肌が白っぽいからか?」

「違ェよ、それもあるけど違うんだよ」

俺の色に染まったら、面白そうだと思った。

「……まあ良いか、早くコレ先生に出して帰るぞ」

「はーい」

彼女はさっさと帰り支度を整え、右手にルーズリーフを持った。

やはり白が似合う、と思った。





その時から、きっと俺は白に染まっていた。



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姫帝より




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