嘆くのならお好きに




今日受けるべき授業が全て終わり、俺は席を立った。

ぐぐっと伸びをすると、身体のあちこちがボキボキ鳴る。それが気持ち良いから俺は毎日こんなところまで来て勉強してるんだろうな、と思う。

勿論、そればかりではないのだが。どちらかというと、もう1つの理由の方が大きい。

「帰ろ」

そう後ろの席の女子が声をかけてきた。この女子が、もう1つの大きな理由だ。

「おう」

そう返事をすると、彼女は目を細めてふわりと笑った。

この笑顔を見るために毎日学校に来ていると言っても、恐らく過言にはならないだろうと思う。授業とかその他諸々は、その笑顔を見る為の試練だと考える。

こんな事彼女に言ったら何か怒られそうだし、恥ずかしいから言わないけど。でも本当、そうでもしなきゃこんな日常生きられねえって。

鞄の中に荷物を詰め込みながらそんな事を考えていると、「ねえまだー?」と彼女の少し不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「悪イ悪イ」

ドン(鞄の中身を整える音)、スッ(鞄の紐に手を伸ばす音)、チャッ(肩に鞄を持ってくる音)の3拍子で帰り支度を終えると、彼女は俺の隣の席の男子と楽しそうに話していた。

あー可愛いなあこんにゃろう。そんな笑顔、誰にでも振り撒くんじゃねえよ。俺って黒いよドス黒いよ、なんて考えながら彼女の腕を掴む。

「あ、終わった?」

「おう、ドン、スッ、チャッで終わらした」

「あはは、何だそれ」

そう俺の冗談(あながち結構本当の事)で笑う彼女を見て、俺の黒い感情が消えていく。

……やっぱ、俺って黒いモンの塊だ。

じゃあなーと隣の奴に声をかけ、帰路につく。すると奴は楽しそうな顔をしてじゃあな、と返してきた。

なんかそれがムカついたからいつもより少し速めに歩くと、彼女が

「ちょっと速いよ」

と俺の袖を握る。

「あ、ごめん」

スピードをいつも通りまで落とすと、彼女は握っていた手を話した。

あーあ、手がスカスカするなあ、淋しいなあ。

そう呟いてみると、見事に彼女に睨まれた。

……いや、うん。

ここ廊下でしたね、すんません。



続き



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