だって君は


 秋が、通り過ぎて行く。公園のベンチで、俺は溜め息を吐くことしか出来なかった。
 悲しいと言われれば、それはすごく悲しい。なんたって、好きだった、大好きだった子に振られたのだ。
 でも、逆にすっきりともしていた。喉のつっかえが取れたような、そんな気分だ。

 俺と好きだった少女、のぞみは中学の頃に出会った。たまたま席が隣で、俺が忘れ物して、のぞみが教科書を見せてくれたのがきっかけで仲良くなった。
 それからはクラスも離れる事もなく、高校でも奇跡的にクラスが一緒で、仲が良さは続いていた。

 だから、俺は油断していたのだ。

 中学の頃からのぞみに彼氏が出来る事はなく(何故なら俺がいつも近くに居たから、周りは勘違いしたのだ)、これからもそれは続いていくだろうと思っていた。
 しかも俺は今の関係に甘んじていた。これからも、俺がいるのにのぞみに告るやつは居ないだろうと、高を括っていたのだ。

 これが、いけなかったのだ。

 そいつは、あまりにも突然現れた。
 俺がのぞみに、好きな人が出来ないんだけどどうしよう、と相談を受けた次の日に現れた。
 そいつは、のぞみと付き合い始めた。──付き合ってから好きになることもある、と言って。

 結果から言うと、見事にそいつの言った通りになった。日に日にのぞみがそいつの事を好きになっていくのが目に見えた。
 すごく、辛かった。



『私、ヤスの事そういう風に見れないの』

 先ほど言われたばかりの、言葉を思い出す。

『でも、友達の中ではヤスが一番好きよ』

 友達の中の一番とか、いらなかった。俺が欲しいのは、そんな言葉じゃない。
 だけど、予想通りの言葉だった。



 あーあ、と思う。もうすぐ冬がやって来る。

 今一番の問題は、明日からのぞみが俺に気を使うようになったらどうしよう、ということだ。
 きっと、のぞみはそんな人じゃあないだろうけど。



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