A C T . 3
- 未 知 の 力 ‐
『おかあさまぁ…おとうさまぁあ…』
『どうしたんだい?メノウ』
『あらあら、転んでしまったのね…』
『…っ…ぅ…ぐずっ……』
『かなり深いわね…でも、もう大丈夫よ。今からお母さんが、痛いのが飛んでいく魔法を掛けてあげるわ…_____』
ピピッ ピピッ
「ん…………」
突然、朝を知らせるアラーム音で突然現実へと引き戻される。
あれはそう…私がまだ幼い頃にお父様とお母様と近くの草原へピクニックに行った時の記憶……
私はいても立ってもいられず、ベッドから飛び起きるとリビングへと続く階段を駆け下りた。
「おはようございます、お母様。昨日のことで少しお話したい事があるのですが……」
朝食の用意をしているその背中から声をかけると、お母様は「もちろんよ」とにっこり笑ってソファに促される。
まだ戸惑いもあるも、真実を確かめたい気持ちの方が勝っていた。
上手く言葉に出来ていたのかは自分でも分からないのだけれど、それでもお母様は時には頷き、そしてしずかに私の話を最後まで聞いてくださいました。
「それはね、治癒魔法というのよ。ふふっ…お母さんとお揃いね?」
そう柔和な笑顔で話すお母様は、治癒魔法を得意とする者…”法術師“としてその名を馳せて各地を飛び回っていた様で。
今はその力は無いそうですが、本当のところはどうなのでしょう…?
そして昨日のあたたかい光は夢で見たものと同じ……そう、私も治癒魔法を使えるようになったのですね…。
当時は幼心にただ凄いと感動するだけで特別意識はしていなかったけれど…お母様のお話を聞くまで、すっかり忘れてしまっていたことに自分でも正直驚きは隠せなかった。
それでも、その力を持っている人はこの世界でも数人と限られているが故に認知度は低く…未だ解明されていない未知の力と呼ばれていて。
授業ではまだそのことについて触れられて居なかったから、あの場にいた私達に分からないのも当然なのかもれない。
そして一人一人得意分野と苦手分野があるように、その人に相性の良い属性が必ずあって、それが私達の制服についているブローチに現れている。
もちろん、治癒魔法はどこにも属さないけれども…誰にでも使えるようものではないのだそう。
「治癒魔法はね…あなた自身と、あなたのかけがえのない人を守る為の力なのよ。でも、メノウなら…きっとその本当の意味が分かるはず。
困ったことがあったらいつでも言ってね…?お父さんとお母さんはいつだってあなたの味方なのよ。」
「お母様……」
「さぁ、朝食にしましょう?急がない学校に遅刻してしまうわ!」
いつだってそう、笑顔で誰かのために力になりたいと強く願うお母様が大好きで……そんな大好きなお母様と同じ能力を持てたことが本当に嬉しかった。
これで自分も誰かの役に立てる…救う側の人間になれるんだってすごく幸せに思えた。