Fancy * Magic





  A C T . 2


  - 目 覚 め -







−中等部1年− 夏

 メノウ's side



「本日ルミナール先生が風邪でお休みのため次の授業は講堂で行います。皆さん速やかに移動してください!」


授業終わりのチャイムが鳴り響く中、クラス委員の子が教卓近くで声を張り上げていた。
ルミナール先生は私達のクラス担当でもあり精霊学の教科担当。
先生の授業はとても分かりやすく、何より個別に質問をしても優しく丁寧に1人1人に答えてくださるから学園内でも人気で…そんな先生がお休みだと聞けばクラスの端々からおどろきと残念そうな声が聞こえてくるのは仕方の無いことかもしれない。

もちろん、私もその1人だったけれど…今思えば昨日から先生は頻繁に咳をして苦しそうでしたし、悪化しなければ良いのですが………


「メノウ、何やってるの?ぼさぼさしてると置いていっちゃうわよ」

そんなことを考えていたらクラスの半数以上が講堂へ移動していたようで…急かすようなライラの声にふと我に返った。
彼女は気は強いけれど常に学園内の上位に入っているほど頭脳明晰。少し前に治癒術や医学書を読んでいるところを見掛けたけれど…そういう方面に興味があるらしく彼女の夢でもあるのだとか。

「メノウちゃん、いこ?」

次に笑顔で声を掛けてくれたのはユエ。この子は身体が弱く登校していることの方が少ないけれど色白でお花畑の上をふわふわと飛んでいる妖精さんのように可愛い子。
ユエもライラも席が近い事もあり入学式初日から親しくなった…大切なお友達。









そう、この頃は友達もたくさんいて…何をしていても楽しかった…毎日が幸せだと思えた。


けれど…この幸せは結局一時的な物に過ぎなかったのよね。
だって、幸せとはほんの些細なできごとで音を立て…いとも簡単に崩れていってしまうものなのだから……










「そう言えば講堂でとしか聞いてないけど何の授業だろうね?」

「そうですわね、実技練習か何かでしょうか?」

「別にそんなのどうだっていいわよ。ったく、一々教室移動しなきゃいけないなんて面倒くさいだけじゃない」


2人に促されるまま教室を出ると私を挟んで左にライラ、右にユエが並び校舎の廊下を小走りに歩く。
誰に教えられた訳でもないのに自然とこの立ち位置になっているのだから妙に嬉しくて仕方ない。


「だいたい学校の授業なんてものは……きゃっ!」

いつものことではあるけれど、先程から文句を垂れ流しているライラが小さな悲鳴と共に私達の視界から消えた。
慌てて振り返るとそこには躓いた拍子に出来た膝の擦り傷と、捻ってしまったのか足首を抑えながら苦痛の表情でうずくまっているライラの姿があった。


「ライラ?!大丈夫ですの?」

膝からは血が滲み出していたし足首もみるみる腫れが酷くなっているように見えた。


「ライラちゃん歩けそう?保健室行って治療してもらお?」

「そうですわ…このままですと良くありませんし…」

「心配いらないわよ!このくら…っ、ぅ……」


傷が痛むのを我慢して起きようとした為に身体のバランスが崩れてそのまま倒れる体制に入る。
そしてユエと2人で受け止めようとしたところ、私の指先が間違って傷口近くに触れてしまった……



「あっ…ごめんなさ……………えっ…?」


慌てて手を引き離そうとするよりも早く、今度は辺り一面がまばゆい光りに包まれた。


眩しいけれど目を凝らして見てみると…その光はどうやら私の手から放たれている。


そして、数秒後。



光は消えてしまった。



「メノウちゃん、今のは…?」


「ごめんなさい…私にも良く解りませんわ……」

感覚を確かめるように何度も手を握って開いてみるけれど自分でも何が起きたのか、全くと言って言い程解らなかった。
掌が温かいオーラに包まれているような、それでいて私の中に何かが流れ込んでくるようで……

一体今のは何だったのでしょうか…?





「あ、ぁ………」


ユエと2人でクエスチョンマークを浮かべていると…ライラの驚いているような怯えているような声


「ライラ?」


「き……傷が……」


「傷がどうかしたの?」


「傷が治ってるの………」


「「え?!」」



そう、先程擦り傷を作った膝を見ても傷すら見当たらない。
それどころか立ち上がる事すら出来なかったライラの足首も腫れが引いて一瞬のうちに完治している。


原因があるとすれば謎の光しかない…3人が同じことを思ったのか2人の視線が一斉に向けられたけれど、何をどう言えば良いのか解らない。




「私は…………」



目の前の出来事が信じられず、そう呟く事しか出来なかった。
それから後のことは何も覚えていない。それほどまでに私達3人の中で強烈な印象を残していったのだから…



家に帰ってからもそれは同じ…
食事も喉を通らない私を心配してかお母様が声を掛けてくださったけれども…誰かに話すことが怖くて…自分の中でたしかに起こっている変化の理由を知ることが出来なくて…大丈夫、としか言えなかった。


でもそう、私はあの光を以前にもどこかで……







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