Fancy * Magic





  A C T . 1


  - 記 憶 -




春は新しい出会いが待ってる、なんて世間一般ではよく言われているけれど…
そんなのは嘘


また同じ事を繰り返すんじゃないかって怖くて堪らないの


もう誰も振り向いてなんかくれなくていい

わたしは一人での時間を過ごしていくって決めた…

自分自身を守るために……







雲一つない晴天に恵まれた今日、中等部最高学年としての生活が幕を開けようとしている。

私と同じ制服を着た学生達が行き交う、校門から校舎までの道のりは校舎前にある大きな噴水広場まで何処までも真っ直ぐ続いていて…そんなに遠くはないけれど近くもない。
ここは道の両脇に様々な木々が植えられていてるから四季によって景色に変わる場所でもあり、ひそかな私のお気に入り。
そんな季節の色に染まった景色ごと楽しむようにゆっくりと歩を進めて行く。

周囲の声に耳を傾ければ、新しい先生がどうだのクラス替えがどうだのと言った会話が聞こえてくるけれど…正直なところ私には一切興味はなかった。……だって、新学期を迎えて“楽しい”だとか“ドキドキする”だとかそういう類の感情はとっくの昔に捨ててしまったのだもの。

ただ、唯一喜ぶべきことがあるとするなら…あの空間にいなくても良い事くらいかしら?
誰かに知られるくらいなら永遠に独りぼっちで構わない、あの頃の私には2度と戻らないと心に決めたから。

周りの賑やかな雰囲気とは裏腹で、気にしないようにすればするほど気持ちはどんどん闇の底へと落ち込んでしまう。そんな思考と脳裏に焼き付いてしまった映像を振り払うようにキツく目を瞑れば…ほんのわずかだけど花先に何か触れた感触がした。





「さくら…の花びら?」


感覚はまちがいでは無かったようでそれが何か確かめるために足を止めてゆっくり目開くと、視界に移ったのは薄桃色の花びら。
…かと思えば今度はこの時期独特の強い風が吹き上げて両脇の桜の木を揺らし、そこから離れたものや地面に落ちた花弁たちが宙を舞っている。





私は……



丁度2年前、今とは正反対の気持ちで学園の門を潜ったのを思い出した。

そう、あの時も今みたいに桜が綺麗で…風が吹くたびに花びら達が散りながらその役目を終えた子達も足元でピンク色の絨毯を作っていたのではなかったかしら。


その様子はまるで…

私の入学を祝福してくれているみたいに…ね。















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笑顔の魔法
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