My younger brother | ナノ





ついてないなつのひ (2/4)
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「暑い…」

「知ってる…」



7月の始め。

神様は梅雨なんかほとんどスッ飛ばして、
日本を本格的な夏に突入させることを決めたらしい。

まっ昼間の太陽の光が明るくて、
青すぎて眩しいくらいの空とあいまってなんだかもう失明とかしそうだ。
日差しが日焼け止めを塗りたくった肌をやすやすと貫通していくのが分かる。

…暑い。
私は今赤也と一緒に、家へ帰る途中に存在する残酷な上り坂を登っている。




「もう、何ジャンケンなんかしてるの。私"あんたたち2人"におつかいお願いしたのよ?」




涼しい笑顔で母が放った一言のせいで、
こんな灼熱地獄みたいな日に弟と仲良くお出かけ。

冗談じゃない。




「あぢいいいいい!!」

「うるっさい知ってる!暑いのは皆一緒なの!黙って歩け!!」

「…里奈が怖ぇ!夏なんか嫌いだー!!」

「うるさい!暑い!」




2人の両手にはずっしりと重いスーパーのビニール袋。
どうして自転車を使わなかったかというと、
家にある2台ともタイヤがパンクして潰れていたから。
空気入れる元気もなかったのでやむを得ず徒歩。

そしてこの惨事。




のろのろ歩きながらふと横を見ると、
赤也の前髪が汗でひょろっと額に張り付いていた。




「ねえ赤也、水につけたらふえる"わかめ"のはずなのに、汗で体積減って見えるよそれ。…ぷっ」

「…はあ!?お前のがうるせーよ!黙って歩け!!」

「……ちっ」

「……何が"ちっ"だ!ちっ!」



これだから暑いのは嫌いなんだ。
暑いとイライラする。
いつも外弁慶で基本いい子の弟がうざく思える。
大体私ジャンケン勝ったのに。
すごく損した気分。

…あーあ。
せっかくの休みなのに、ついてない。

そう思いながらふと左の建物を見ると、




「…あ、コンビニ」




いつも行きつけのその店があった。
それが見えたらあとは家までもうほんのちょっとなのだ、けど…




「…ちょっと休憩しよっかぁあああ!!」

「賛成ぇええー!!」




キンッキンに冷えた屋内が恋しくて恋しくて、
私たちは残った体力を振り絞り、店にダッシュで駆け込んだ。






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