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神様のヒマ潰し (1/1)
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「っ幸村でしょ、」

「なにが?」

「こっ…こないだの学園祭の肝試し、わざと仁王くんとペア組ませたの…っ!」




名前はそう言って、俺の腕の中で泣いた。
身体が熱い。
特に心臓あたり。
名前が吐く熱い息のせいだ。

なんだか興奮してきた。




「そんなこと出来るわけないだろ?くじびきの確率はみんな等しいんだ。俺が魔法を使ったとでも言うつもり?」

「じ…ゃなくてっ!」




がばっと顔を上げてキッと睨み付けてきた。
涙で潤った綺麗な瞳。
キスしたい。




「肝試しの前に、幸村がくじ引き係の子に何か耳打ちしてたって!丸井くんが教えてくれたもん!」

「へぇ」




ブン太が…ねぇ。




「俺よりあいつの言葉を信じるの?」

「そ…そうじゃないけど…」

「だったらもう忘れよう?ねぇ、そんなことよりキス。…させて」

「……ん…う」

「いいこ。そうそう…だーい好き」




言うまでもないけれど。
くじを仕組んだのはこの俺だ。




名前は以前、仁王のことが好きだった。
好きで好きでどうしようもなくて、だから告白したけど玉砕した。
やつには他に好きな人がいたのだ。
それが皮肉なことに名前の親友なわけで。
ああかわいそうな名前。

ところで俺は名前が好きだった。
名前が仁王を好きになるずっと前から、名前のことが好きだった。
そうして完全に落ち込んで恋愛恐怖症になった名前のそこを狙って、俺は彼女に告白した。




「俺があいつを忘れさせてあげる」

「他に何も考えられなくなるくらい、俺に夢中にさせてみせるよ」




そんな呪文をかけて、彼女を恋人にして。

…結局名前は俺にハマった。
上手くいきすぎてつまらないくらい、面白いくらい俺の虜になった。

それで、今。




「幸村はいじわるだ」

「なんで?」

「…仁王くんが今、私の親友の彼氏なの知ってるでしょ。なのに仁王くんとペアになっちゃったら私が絶対罪悪感しょいこむと思って、わざとそうやって」

「まさか」




…その通り。
ついでに言うとその罪悪感に苛まされながらも、前に好きだった頃の気持ちを思い出して少し嬉しくなった自分を嫌になればいいと思ったんだよ。
それで「私には今幸村がいるのに」って胸を痛めて、きゅん、ってなって欲しかった。

…そうなったら面白いと思ったんだ。




「ねぇ…いっつもなに考えてるの?」

「名前のこと」

「…それはなんとなくわかる。私のことを本当に好きでいてくれてるっていうのは、わかる。でも」




愛されてる気がしないわけじゃない。
ただSっ気が強いだけだとも思わない。

だけど、




私との恋、ゲームみたいな楽しみ方してるでしょ?




「…へぇ」




ご名答だった。
なかなか勘が鋭い。
この子、可愛いだけじゃなくて賢いんだ。

今のでさらに好きになったよ。




「こんな展開になったら俺の事こう思ってくれるんじゃないかとか、こう言ったらこんな一面見せてくれるんじゃないかとか。私のこと好きでいてくれてる以上に、何か別の衝動に心掴まれて行動してるとこ、あるよね」

「そんなことないよ」




ある。




「だってその方が恋愛し甲斐あるもん、って感じのはず」

「違うってば」




そうそう、そんな感じ。




「そんなの…悪趣味だよ。そうやって弄んだり駆け引きしたりしなくたって、私ちゃんと幸村のこと好きなの…に」

「どうしてまた泣いちゃうの?俺だって名前の事こーんなに好きなのに…」




だから言ってるだろ。
全ては「面白いかどうか」、ただそれだけ。

自分と相手の「好き」って気持ちがただ一致してるだけなんて、
退屈すぎてやってられない。
だから俺は仕組むし企むし、この愛全部を以てして大好きな君をも唆すんだ。

そこに愛がないなんて思う?
馬鹿なこと言わないで。

そこには愛しか存在してない。




「…遊び上手でイタズラ好きな俺は、きらい?」

「…やっぱり遊びながら楽しんでたって認めるんだ」

「きらい?」

「……んーん」

「じゃあいいでしょ?これからもちゃんと、俺のこと好きでいてね」

「…なんか私…あなたが書いた恋愛ドラマのシナリオでうまいこと演じさせられてる、間抜けな役者みたい」

「はは、まったくだ」

「えっ」


そういう利口なところが馬鹿で、可愛い。


迷路のようなこの恋に
(神と2人で)(明け暮れる?)




(イメージ曲:神様のヒマ潰し/GO!GO!7188)

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