フェアリーテイルは檻の中 (2/6)
もうそろそろいいだろう。
「…さっきから何無駄口叩いてんの?」
「ひっ!」「き…きゃあ!!」
ガチャーン!!
突然飛び起きて窓辺に飾ってあった花瓶を勢いよく叩きつけたら。
案の定不快な音を立ててガラスは割れ、
看護師どもは悲鳴を上げた。
「美姫ちゃ…ん?お、起きてたの、亅
「そんなにそいつのお世話がしたいなら2人揃って私の担当外れてよ亅
「な…亅
「あ、つーか明日からこの病院来なくていいわ。なんかあんたらの顔もう2度と見たくなくなっちゃったから、パパに言って首切ってもらうね」
『!!』
“パパ“
その言葉を聞いたそいつらは揃ってはっと息を呑んだ。
真っ青な顔で首を激しく横に振る。
必死でとりすがるような哀れな目で。
だけどそんなもの受理してやる筋合いこっちには更々ない。
…だってここじゃ、"私"が絶対だから。
「今までごくろーさん亅
ガッシャーン!!!
今度は立ち上がって、近くの薬品が乗ったワゴンを思いっきり倒した。
何種類もの変な匂いのする液体がいろんな瓶から一気に流れ出し、
病室の床に奇妙な色の水溜まりを作る。
すると、
「ご…ごめんなさい美姫ちゃん、ごめんなさい…ごめんなさい!許して、お願い!亅
「ああ、あ…お願いします!お父さんに言わないで!!亅
びびりまくった2人は本当に私の身体にすがりついてきて、
目に涙を滲ませ懇願してきた。
信じられないくらい目障りだ。
何でこいつらを側において今まで2週間も平気でいられたのか、
そんな自分が不思議でしょうがない。
「汚い手で触んな。帰れ。失セロ」
「お願い…今まで以上に一生懸命お世話するから…っ!追い出さないで!!」
「私、去年やっとここで勤務できるようになったばっかりなの!お願いよ!辞めさせないで!!」
ああーあああああああ五月蝿い煩いウルサイうるさい。
屑だ。
屑だ。
「っ黙れブス!いいから部屋片付けてさっさと出てけブッ殺すぞッ!!」
「きゃああああ!!」
「ごめんなさい、ごめんなさ…あああああ!!」
怒鳴る私、喚く大人。
フロアいっぱいに響き渡るその叫声は、聞いて聞かぬふりをする無責任な他の看護師や医師のお陰で日常茶飯事のBGMだった。
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