恋情ピュアグリーン (3/6)
そしてその日。
赤也たちが主役である結婚式当日ではなく、
私たちが主役の礼装選び当日。
「わあー…」
「叔父に頼んで特別に貸し切らせてもらった。好きなだけ時間を掛けて選ぶといい」
古くて趣のある大きな呉服屋。
男性用女性用子供用、暖色寒色様々な着物が所狭しと展示されていて、
中には蓮二と私しか人がいなかった。
「こんな立派なところ…本当に今日1日借りていいの?」
「ああ。まずはお前の着物から見るか」
「やった。ありがとう!」
蓮二は「こっちだ」と言ってスッと私の手を引くと、
女性用コーナーへと案内した。
少しひんやりした彼の左手が、私の右手に触れる。
もう付き合って何年にもなるのに、
そんなごく当たり前の振る舞いにいちいちドキッとしてしまう。
「……」
「色は花嫁の着る白以外だと紅梅や臙脂に辛子色、花緑青や桔梗鼠。それから刈安色に竜胆、黒などがあるがお前はどれが好みだ?」
「…えっ?」
こんなにいつまでたってもウブじゃ、結婚なんて夢のまた夢だろうか。
などと考えていたら、突然蓮二が日本語じゃない言葉を発した。
…何だって?
「ごめん、もっかい言って。黒しか聞き取れなかった」
「…お前が好きな色は何か、と聞いた。淡い朱色や渋い赤、マスタード色に青緑、グレーにくすんだ黄色に淡い紫に黒などがあるが」
「噛み砕いて解説してくれてありがとう…」
わざわざ難しい言葉使わなくても最初からそう言ってください。
これだからこの知識オバケは…
そんなことを思ったけど。
実際にそれらの着物に目をやると、
そういう不満っぽい感情が全部ぶっ飛んだ。
「きゃああああコレめっちゃ綺麗!!」
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