familiar (3/9)
「うわああああああんオカンのあほおおおおおおお!!」
「くっそマジで腹立つ!オトンもオカンも侑士も…っああああもう帰らん!俺絶対帰らんからなっ!!」
「アタシも帰らん!何やのもーっお姉ったら!プンプン!!」
「ほっ…ほな俺も!今日はここで小春と一緒におるっ!おるぞコラアアア!!」
「あーウザいマジでウザいプギャーホンマ死ねmjksksksksふぁっきゅーーーーー」
普段なら巨人2人でいっぱいいっぱいのはずのその部屋で、
「あ……あれ…?」
見覚えのある5人が、思い思いにくつろいでいた。
床にひっくり返って暴れながらわめく金ちゃんと、
頭を掻きむしりながらスマホの画面に怒鳴り散らしている謙也。
ファンシーなピンク色のパジャマに身を包み、
ほっぺたを可愛く膨らませて腕を組んでいる小春と、
そのご機嫌をとりながらはしゃぐユウジ。
それから隅っこで持参したノートパソコンを広げとんでもない速さで何かを打ち込んでいる恐ろしい財前。
「み…みんなどないしたん、こんな時間にこんなとこ…」
自分も人のことは言えないがまさかと思ったら、
そう。
…まさしくそのまさかだった。
入口で棒立ちしたままのあたしに応じたみんなは、
「おお麻衣!麻衣もオカンとケンカしたんか!?」
「よう来たなー入れ入れ!お前も今日ここでみんなと一緒に過ごそうや!!」
「ごっつい荷物やねー、そない準備万端な家出初めて見たわー。あ、せや麻衣ちゃん、ヘアブラシ持っとらへん?」
「うわー邪魔やわーお前なんで来たん?ええから帰れ。はよ帰れ」
「ウザいウザいウザいカスカスカスカスmjktmjktマジキt…あ。麻衣先輩もすか、いらっしゃい」
おそらくあたしと同じ経緯で家を飛び出し、
ここに転がり込んできたらしかった。
なるほど、さすがテニス部。
思考回路と行動パターンの安直さがみんなモロ被りやねんな。
四天大家族、集う場所其処常に我が家なりけり。
誇らしい。
「…うわあーほんまあたしらって似た者同士やねんなー!嬉しいわ!!」
そう言って床に寝そべった金ちゃんを抱き起こして頭をなでると、
「なっ、ワイは嬉しない!怒っとる!もうあの家には帰らんのや!!」と振り払われた。
そうしてフグのようにぷーっと怒った彼は再び床に突っ伏し、
「ワイ今日から遠山の子やめるねん!今日から銀と千歳んとこの子なったるねんもーんっ!!」
と駄々をこねた。
「珍しいなぁ。金ちゃんていっつもお母さんと超仲良しやのに」
こんな子反抗期迎えたら手に負えへんやろ…
と呟くと、
「なんかね。こないだペットショップで見かけた犬欲しがったら即却下されて、そんで膨れてここ来たらしいんよ」
いつの間にかあたしのバッグの中からヘアブラシを取り出した小春が、
極短の髪の毛を器用にとかしながら答えた。
どんだけ我がままやねん金ちゃん。
今飼ってる柴犬の金太丸(♀)大事にしてあげえや…
っていうか、
「…あっそれ使ったあかんて小春!他人のブラシで髪とかしたら失恋するらしいで!!」
「えっ嘘やろ!?イヤ〜ン麻衣ちゃん早く言うてよー!!」
「ご、ごめん…!」
「なっ…安心せえ小春!俺はいつでもお前のこと想ってr」
「は?アタシの好きな相手はユウくんちゃうわよ」
「!?」
ユウジどんまい。
「ケンヤは?」
「俺か。俺は金ちゃんなんかよりもっと深刻な理由や…」
「ほう」
今まで格闘していたケータイを投げ出すと、
悔しさいっぱいの表情でこう告げたのは謙也。
「侑士のが男前やし頭ええし色気あるしモテる…」
「ん?」
「ってここ最近それしかいいよらんねんうちの両親!!はあああめっさウザい!ごっさウザいわあああ!!!!」
「……」
金ちゃんとあんまレベル変わってない気がする。
要はもっと自分のこと認めてほしいのと、
その気持ちを素直に受け入れられないから嫉妬して怒ってるわけね。
…悪いけどそこまで大層な理由ちゃうと思うよ。
「んでツイッターで侑士にいちゃもんつけたったらアイツめっちゃキモいことばっか書いてきよんねん!おかげで俺のタイムラインあいつからの中傷ツイートで埋め尽くされとんねん!あああああうっざああああ!!!」
「アンタがけしかけたんかいな!!」
しかも見せてもらった氷帝の忍足くんの謙也に対するつぶやき。
「どないしたんやケンヤ」
「金髪の上にそないイラチやったら余計ハゲるん早なるで」
「嘘やて。スマンマン、ホンマに何があってん。電話で話聞いたろか」
「ケンヤ、ホンマに大丈夫か?」
特に酷いことは書いてない。
ちゅーか思いっきり気遣うてもろてますけど?
だけど彼もまた、金ちゃん同様へそを曲げて仏頂面。
自分の家に帰る気はさらさらないようだった。
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