My loving mates | ナノ





familiar (2/9)
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「たのもー!たのもー!たのもおおおおお!!」




家から自転車をかっ飛ばしておよそ7分。

見慣れた校舎の隣、
及びテニスコート裏の部室塔と向かい合うように建つ小さな建物の下であたしは大声を張り上げた。

まだ夕方の6時前。
残って部活の後片付けをしていた数人の生徒が訝しげにこっちを見たけど気にしない。
っていうか、もうちょっと夜遅くのが家出っぽくてかっこよかったかなぁ。

なんていかにも中坊らしい考えが頭をよぎった時、




「…おお、麻衣はん。今日は部活も休みやのにこないな辺境の地まで…一体どないしたんや?」




筆文字で"ゑくすたしゐ"と書かれたグレーのTシャツを着た銀が、
ドアからぬっと顔を出した。

別に辺境やあらへんけどね。

ちなみにそのTシャツはユウジのオトンがデザインしてくれたもので、
テニス部のレギュラーメンバーはそれぞれ色違いを1着ずつ持っている。

あたしも今日パジャマ代わりに持ってきた。




「銀!あんな、お願いがあんねんけど!!」

「何じゃ、麻衣はん」

「今日からしばらく、ここに泊めてもらえへんかな!?」

「!」




驚いた顔をした銀。

彼と千歳を含む――
他府県から四天宝寺に通ってきている生徒はそう。
みんなみんな、この古くてこぢんまりとしたオンボロ学生寮に入る。

一人暮らしなんて冗談やあらへんわ!

私が家出を決意し真っさきに居候先に選んだのはここ。
そもそも学校の敷地内だから遅刻の心配はないし、
寮母さんは顔見知りでご飯はおいしいし。

何より朝から晩まで、
寝ても覚めてもテニス部のこと考えてられる。

古かろうが汚かろうが関係ない。
あたしは誰が何と言おうと、
ここにおいてもらうと決めたのだ。


そう1人で意気込んでらんらんと目を輝かせていると、
銀がドアを大きく開けてあたしに物凄くゆっくりした動きで手招きをした。

お。なんか神々しい仕草。

それから彼は穏やかな面持ちのまま告げた。




「何やら色々理由がありそうやのう…。ま、とにかく入りや」

「わーい!銀おおきにー!!」




そうして寮の中へと通され、
銀と千歳の部屋のドアをるんるんで開けてみたあたしは、

…思わずあんぐりと口を開いた。




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