あけましてんほほほーじ (1/1)
冬休み明け最初の部活。
横降りの大雪に耐えながらも超光速でチャリを漕ぎ、
やっとの思いで部室へたどり着くと。
「…あ?」
「おーケンヤ!あけおめー!」
「イヤ〜ン久しぶりー!外寒かったやろ、はよアタシの近くきてあったまり!!」
「何ぬかしとんじゃ!…ケンヤ、座るなら小春やなくて銀の隣やからな!!」
「スマンのう…ワシの隣はもうこれ以上人が入られへんわ」
見慣れたいつものメンツが、
日本の年末年始における1家族と化していた。
「お前ら…何やっとんねん!!」
「えー?何って…」
「正月ごっこやけどー!!」
部屋の真ん中を陣取っていたのは、ずいぶん古びた大きなコタツ。
そこにせせこましく、
肩を寄せ合って無理やり全員座っている部員たち。
テーブルの上のみかんやお菓子をダラダラ頬張りながら、
何やら楽しそうに談笑している。
「ちょっ…!?練習は…」
俺は状況が理解できず、白石に声をかけた。
正月でなくても暴食が通常営業の金ちゃんのために、
何十個ものみかんをせっせと剥いていたオカン白石に。
すると返ってきた答えは、
「今日の活動内容は"団らん"や」
「はぁ!?」
「新しい年迎えたことやし、まあみんな今年も仲良うすんでー!ゆーことでな。改めて親睦深める時間設けたんや」
「これ以上深めてどないするっちゅーねん!!」
まだまだダラけていたい、
休みボケしていたいという願望のかたまりのようなものだった。
そんな白石らしない屁理屈言うて…!
でも確かに、1度コタツに入ってしまうとその温さからなかなか脱出できない…
したくないというのは分からなくはない。
日本人なら誰もが経験することだ。
…だが。
「つーかこのコタツどっから持って来てん!誰のやねん!!」
ツッコむべきところはきちんとツッコんでおく。
周りの奴らが全員ボケ側に回っていたとしても、
俺には瞬時にそれができた。
それこそ、俺がこのメンバー1の常識人たる所以なのだ。
「あーこれはな、オサムちゃんがくれてん!ワイらにお年玉の代わりやー言うて!!」
「ユウジ、そこにある煎餅取ってくれんね?」
「おー。ほな代わりにそこのポテチの袋取ってや、千歳」
「その袋もう空っすわ。それより先輩ら、まだぜんざいのお代わり要ります?」
『いるいるー!!』
「おおおお!財前、ワイもワイもー!!」
たとえ、
「お…お前ら…」
「な、ケンヤも今日は三箇日の延長でくつろいどき。別にバチ当たらんで?これは無駄な時間とちゃうんや」
「ケンヤー!ケンヤもぜんざいが持ってきた財前食うやろ?な、一緒にこっち座って食おうやー!!」
「金ちゃん、逆よ逆!新年早々ええボケやないのー!」
「なかなかやりよるな金ちゃん…よし、今年1発目の花丸や!!」
「わーい白石から花丸もろたー!にゃっはっはーっ!!」
「ちょっ…財前!俺のぜんざいの白玉、白石より1個少なないか?」
「先輩は部長やなくて"副"部長なんで」
「何じゃその区別…っちゅーかお前白石より数多いやんけ!!」
…自分もその何秒か後に、ボケ側へ回ることが決まっていたとしても。
「な、なあ財前…」
俺の分の白玉、まだちゃんと残っとるやんな?
(こんなみんなと今年1年も)
(あんじょうよろしゅうやっていきたいっちゅー話や!)
「んなもんあるわけあらへんがな、遅刻しといて何言うてますねん先輩……ごくん」
「なっ、おま…喉!今絶対飲み込んだやろ!それ俺のやったやろ絶対!!」
〜END〜
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