絶対温感 (2/2)
「放して」
「だから言ってるだろぃ。そうして欲しかったら、キス寄越せって」
「…何でそうなるの?」
微温い。
微温い。
馬鹿みたい。
そんな大人の真似事みたいな動作も、
汗に熱を奪われてさらに冷めていたこいつの体温も。
やっぱり大っ嫌いだった。
…だけどあの日からあたしは、
「あのさ、玲奈」
なぜか丸井のこのぬくもりが、どうしようもなく心地が良いと――
そう感じるようになっていたのだ。
「…離してってば!」
嘘。
はなさないで。
ふれてさわって、触って障って。
もっとあたしに、差し障れ。
…頭と身体はいつだって裏腹。
心はぐちゃぐちゃに掻き乱されて、もう使い物にならない。
「本当にそう思ってる?」
「……っ」
思ってない。
思ってないの。
本当はずっとこうしていたい。
いつか抜け出さなければならない時のことなんか考えずに、
いつまでもこのぬるま湯に浸かっていたい。
だけどそんなあたしの気を知ってか知らずか…
多分知っているんだろう。
丸井が再び、喋った。
「お前、俺の体温が微温くて気持ち悪いって言ったけどさ」
「……」
微温い。
微温い。
総じて微温。
だけど…だけど。
「俺はこうしてるときの玲奈の体温、気持ち良くてすっげー好きだぜ」
「……ぁあ」
なんて気怠くて、愛しい温度。
〜END〜
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