アメトムチ (1/5)
「あー女キョウダイ欲しー」
「!」
その言葉を聞いて身体がぴくっと反応する。
女キョウダイ。
「えー…何もいいことないっスよ?俺男キョウダイが良かったー」
「なら俺んとこの弟2匹とも持ってけよー」
いつものようにダラダラ着替えをしながらそんな会話をしているのはブン太と赤也。
俺はラケットの準備をしながら、黙ってその話に耳を傾けた。
「えっ、何でっスか?あんなに可愛い可愛いって自慢してた弟だったのに」
「最近生意気なんだよ…全然言うこと聞かねーし」
「あー…でもそんなの、俺んとこの姉貴に比べたら全然マシっすよ」
「何、赤也のねーちゃんこそ可愛いじゃん。どこが不満なわけ?」
「……また男作ってたんス」
「…は」
んなもん好きにさせてやれよ!ねーちゃんの勝手だろぃ!
だってそいつキモいんスもん!なんかホモっぽいし初対面で俺のことあーくんとか呼んでくるんスよ!?
…なんてやりとり、真顔でやってる2人。
俺はついに堪え兼ねて、
「……ククク…」
笑い声を漏らしてしまった。
「あれ。仁王?」
「先輩、話聞いてたんスか?」
「あ、ああ…」
やんちゃ盛りの弟、男選びの下手な姉。
いずれにしても。
「…随分面白い話じゃのう」
お前らみたいなのと血の繋がっとる奴らなんて、何の心配もいらんはずぜよ。
…俺んとこの姉貴に比べたら、な。
「面白くなんかねーっての!ちょっと真面目に聞いてくれよ仁王、実は昨日上の弟がさぁ…」
「あれ。そう言えば、仁王先輩って姉貴も弟もいましたよね?」
「ん…そうだったか?」
「…プリッ」
そ、赤也正解。
しかも俺が手を焼いとる相手は弟じゃなくて、おまんとおんなじ"姉貴"の方。
「へぇー、仁王のねーちゃんかぁ。どうせモデルみたいに美人なんだろぃ」
「いいなぁ絶対そうっスね…あ、そうだ!今度会いに行ってもいいっスか!?」
「おっ、それいいじゃん!俺も行きたい!!」
「無理じゃ」
好奇心に目を輝かせる可愛い2人を、俺はバッサリ切り捨てた。
「えーっケチー!」
「ちょっとだけ!ね、ちょっとお姉さんの顔見れたらすぐ帰りますから!!」
「…お前さんら、フェミニストの上にそんな綺麗な面構えして一目でも優里に会ってみんしゃい」
いいか、これは忠告ナリ。
「一瞬で食われて飽きたら即行ポイ、ぜよ?」
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