ブラックハッピーバースデイ (1/5)
「花凜せんぱーい!!」
「うわっ!!」
いつものように部室で地味なマネージャー業をこなしていると、
後ろから突然赤也の声で名前を呼ばれた。
「びっくりしたぁ…どしたの…赤」
パァアン!!
「うわああっ!!」
振り向きざまに今度は爆発音がしてまたびっくり。
見ると中身が破裂したクラッカーを手に持ったR陣のみんなが、
笑顔で私に向かってこう言ったのだった。
『花凜(先輩)、誕生日おめでとう(っス)!!』
「わ…」
そう。
実は今日この日は、私の誕生日。
1週間前から散々宣伝してたのに、
やっぱり忘れられてたのかと落ち込んでいた部活終了10分前のことだった。
「あ…ありがとうみんな…!!」
クラッカーから飛び出した大量のカラーテープのモジャモジャを拾って頭に乗せつつ、私は涙ぐんでお礼を言った。
「乗せた」
「…乗せたぜよ」
「なぜ乗せたんだ」
「お前じっとしてたら可愛いのになー。行動が変だよな」
「同感です」
「でも似合ってるっスよ。俺の髪の毛みたいっス」
「お、いいな。木下、それちょっと俺にも分けてくれ」
「ジャッカルはその頭が1番だと思うよ、俺は」
…なんか感動できたの一瞬だけだった。
クサくはないが、もう少し演出に余韻が欲しいところだ。
私の奇妙なウケ狙いがみんなにそうさせたんだとしても。
「でも覚えててくれたんだねー。本当にありがとう!」
そう言いながらジャッカルの望みどおり、
彼の寂しい頭を今私がかぶっていたモジャモジャで飾ってあげた。
む。
ディスコダンサーみたいだ。
「そりゃあ…あんなにしつこく言われたら嫌でも覚えるだろぃ」
ブン太がめんどくさそうに言ったので、
「またそんなー。まんざら嫌でもないクセに」
私はフフン、と鼻で笑っておいた。
「なっ…」
「そうそう花凜先輩!俺ら今から、花凜先輩に何でも好きなものご馳走するっス!!」
「え!それほんとう!!」
「もちろんっスよ!焼肉か回転寿司、どっちでも好きな方選んでください!!」
「……あー」
それ、
「へへっ。遠慮はいらないっス」
"赤也くんの"好きなもの、であるに3票。
「…じゃあ、回転寿司で」
ま、いっか。
今日は楽しくなりそうだ。
…と、
そのときはまだ、思ってた。
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