まるっきりぷれいぼーいず (1/1)
「男って揺れるモンに弱くね?」
いつものガムをぷーっと膨らませて、丸井先輩が何気なく言った。
俺も何気なく答える。
「…あー、そうかもしんないっスね」
そんな会話のきっかけになったのは、
今俺らの目の前に広がる景色。
「…女テニっていいよな」
「そうっスね。ポニーテール揺らして、あんな短い丈のスコート穿いて走ってたら無敵っしょ」
「や…でもあそこのチア見ろ!あの美女率の高さは侮れねぇ!」
「うわ脚きっれ!ちょっと動いただけでスカート超ヒラヒラ揺れてる!やば!!」
真田副部長が不在の日の部活。
俺と丸井先輩はこっそり練習を抜け出して、よくこの場所に足を運ぶ。
ここは女テニの練習風景が一望できる男テニのテニスコート裏。
にして、可愛いユニフォームでその辺を歩き回るチア部員たちも拝める絶好のスポットだった。
「…あ、あの子可愛い」
ふと目に留まった女テニの1年に興味が湧く。
色白で細くて、
少しだけ茶色がかった綺麗な髪を1つにまとめてるその子。
「ん?どれ」
「あそこ。チアの子と喋ってる、水色のシュシュの子っス」
「…マジ?俺今そのチアの子が可愛いって思ってた!」
「おぉ!偶然っスね!」
そう答えると、
「丁度いいじゃん」
とブン太先輩。
え?
と聞き返して顔を見ると、
「2人まとめて仲良くなれるチャンスだろぃ?」
そう言ってにやあーっと笑ってみせた。
「…あぁー」
その意図に気づいて俺も笑う。
…いわゆるナンパだ。
先輩としに行くのなんて久々。
1人でやるより絶対成功率高ぇの分かってるから、テンション上がった。
「さて、と」
「あの子ら見た感じミーハーっぽいしさ、ちょっと話し掛けただけで向こうからアドレス聞かれんのは余裕だと思わね?」
「そうっスね。多分こっちからメールしたら毎回即レスしてくれるタイプ!」
「思った。可愛いよなそれ。…っしゃ、んならとりあえずは行動!」
「うぃっス!!」
そして俺らは。
自分で思う最高のカオを作ると、
狙った獲物のいる方へゆっくりと歩いていった。
「…ねぇ!あれ男テニの丸井先輩と切原先輩じゃない?」
「ほ…ほんとだ!わ、こっち来るよ!超かっこいい…!」
こっちに気づいた彼女達のそんなやりとりが聞こえたなら、
「ねーねー君ら今休憩時間?」
「はっ…はい!!」
「俺らのこと知ってる?」
「もっももちろんですっ!!」
結果はもう決まったようなもんで。
…なんてまぁ、今までに成功以外したことなんてねーんだけど。
「…なら俺らとさ、」
『ちょっとだけ話さね?』
丸井切原のナンパの手引き
(とどのつまり)
(手当たり次第?)
『よ…喜んでっ!!』
〜END〜
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