愛憎手相 (2/5)
「なんじゃ手相か」
「そ」
たまたま私たちの他に誰もいない部室。
いつの日か以来、仁王と2人っきりの空間がどうにも落ち着かない私。
でも仲が悪いわけじゃないのにお互い無言ってのも避けたい展開だったので、
最近のマイブームである手相占いで軽ーい会話を取り入れようとしてみたのだ。
「えーと、これが頭脳線でこれが運命線で…ってうわ!」
細長いのになんかガッシリしてる仁王の手の平を指でたどっていくうちに、
思わず声を上げてしまった。
「生命線短っ!!」
「ん?あー」
平然としている目の前の彼が信じられない。
だって普通なら親指の付け根あたりから、ゆるやかなカーブを描いてるはずのそれ。
「こ…これヤバいって仁王!明日死ぬんじゃないの!?」
っていうぐらい極端に薄くて細くて、
不自然なくらい途中でぶっつり切断されてたんだもの。
下手すると私の半分もないかもしれなかった。
私もそこまで長いわけじゃないのに!
「どどどどうしよう仁王どうする!?」
「手相なんて時間経てば変わるき心配いらんじゃろ。こんな線の1本や2本、そのうちすぐ伸びるぜよ」
「でも…」
それにしたってここまで儚げな生命線見たことない。
私はペンケースから黒の油性マジックを取り出し、
彼のその線に沿ってぶっとくなぞった。
「…これでよし」
「はは、ありがとさん」
おかしそうに笑って私の頭を撫でる仁王。
その笑顔がどうか、明日を過ぎてもなくなりませんよーに。
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