性春街道まっしぐら (2/9)
「いいじゃないスか!やりましょうよ!!」
「却下」
「おう、そうだな!ヒヤッとしてよさそうじゃん!!」
「却下」
「では電気を消そう。もうそこまで明るくはないが、ブラインドも下げて出来るだけ光を遮断するべきだ」
「却下」
「蝋燭もあったほうがいいのではないですか?」
「ああ、確かに。人数分用意して、自分の話が終わったら吹き消すってヤツだよな」
「却下!」
「ふむ。しかしそんなものあるのか?」
「大丈夫だよ真田。蝋燭なら俺が持ってる」
「げっ!幸村部長、何でそんなもん持ち歩いてるんスか…」
酷い。
みんななんて華麗な無視なの!
怪談?
この私の前で、怪談…だと…?
「却下!却下却下却下!!絶っっ対却下あああああ!!」
「花凜…」
企画の言い出しっぺの仁王が、断固拒否を絶叫した私を哀れむように見た。
そしてはぁーっとわざとらしく溜息をつき、私の肩に手を置く。
「分かった分かった。見かけに寄らずこーいうの怖いんじゃな、おまんは。なら仕方ないき」
そう言って優しく微笑んでくれた。
…ふう、よかった!
"見かけに寄らず"は余計だけど、これでくだらないことしないで済む。
危なかったよ。
さ、じゃあ帰ろうかみんな…
と言いかけた、その時。
「…なら花凜は先に帰ってていいぜよ。俺らだけで楽しむナリ」
「!?」
彼の"微笑"が一瞬にして"嘲笑"に変わった。
「じゃーな花凜!…くれぐれも気ぃつけろよマジで」
「花凜先輩…家に着くまで絶対振り返ったらダメっスよ」
「ちょっ!!」
仁王を煽り、わざと声のトーンを落としたブン太と赤也の言葉が頭の中でこだまする。
気ぃつけろよ、気ぃつけろよ、気ぃつけろよ
絶対振り返ったらダメっスよ、ダメっスよ、ダメっスよ…
ざわっと音を立てて、全身が鳥肌立つ。
かっ…
帰るもんか、死んでも1人でなんて!!
「わぁかったってば!私も残るってばもうー!!」
その言葉を聞いて、
レギュラー陣全員がにんまり笑って見えたのは気のせいだと思いたい。
切実に。
「…それじゃ、始めようか」
幸村が言い、狭い部室の中に9つの小さな火が灯った。
さあ来い、かかって来い。
…嘘ですお願い助けて神様。
[ 13/33 ]
[
*prev] [
next#]