TABOO (3/9)
「…何してんの?もうすぐ下校時間だぜ?」
ゆっくり歩み寄ると、葉月は手元の何十枚ものプリントを片付け始めた。
「あはは…そうだね、もうすぐ帰らなきゃね」
「……」
教室は電気が点けられていない。
窓から差し込む夕日だけが眩しくて、
向かい合ったそいつと俺の横顔を赤く染めていた。
誰もいない部屋で、葉月と二人っきり。
その事実がどんなに嬉しかったことだろう。
だけど心の中とは裏腹に俺はあえてなんでもないふうを装い、
わざとぶっきらぼうに質問してみる。
「…それ、何」
「あ、これ?これは委員会で使う資料。今日までに10枚1組で50セット作らなきゃいけなかったんだけど」
しかし葉月はそんな俺を気にすることなく、
「…間に合いませんでした、ハイ」
誰にでも変わらないお茶目な態度でおどけてみせた。
く、くそ…
可愛すぎる…!
簡単に舌出して笑ってみせてんじゃねーよ!
お前にそんな雑用押し付けるなんてどんだけ酷ぇ委員会だよ、
俺が今すぐにでも潰してきてやろうか!
思わずそう叫んでしまいそうになった。
でもダメだ。
だって俺には照れ隠し以外に、
…アンタに無愛想にしておかなきゃなんない理由があるから。
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