美しいシンドリアの浜辺に、私はぽつんと立っている。
白い砂を蹴り上げても、キラキラと光るのは一瞬きだけで、余所見なんかした瞬間に消えてなくなる。
人の命だってきっとそう。
燃えるような生命の熱量はほんの一秒にも満たなくて、すこしでも気を緩めればあっという間に底を尽きる。
右手で振り払っただけで、
吐息で囁くだけで、
人間なんてものはまるで蝋燭の火が消えるみたいにあっけなく、どうでもよく、死んでしまうのだ。
「だからね、シャルルカン様。」
「……おう。」
いつの間にか音も立てずに私の後ろに立っていた彼に声を掛ける。
彼はいつだってそうだ。
いつだって私の気付かない内に後ろに立っては黙って私を見ているのだ。
「もし。もしも貴方が死にでもしたら、私、恨むわ。」
「…何を。」
「全てを。」
敵を
シンドバッド王を
この国を
貴方を
運命を
世界を
「んなこと、させやしねーよ。」
「そうでなきゃ、困るわ。」
つまるところ彼はシンドバッド王に仕える八人将の一人であって、王と共に戦い、王の為に命を張っているのだ。
それは私達の耳に入るかもしれないし、入らないかもしれない。
もしかしたら外交に向かった王に同行し、私なんかの思いのよらない場所で刃を煌めかせているのかもしれない。
私はそれが怖いのだ。
私が呑気に寝ている間に、彼の命が削られてたりなんかしないかと、不安で不安で堪らない。
そんな感覚を振り切るように、私は走って静かに揺れる波間に身を投げ出した。
後ろから、彼の焦った声が聞こえたけれどすぐに水音に紛れて消える。
冷たい海水に頭が冷えていく。
塩辛い青の世界に、溶けてしまいたい。
ぐっと腕を引かれる。
生暖かい肌が触れる感覚。
いっそこのまま泡になってしまいたい。
ああ、シャルルカン様。シャルルカン様。
白い世界の青い海に二人は沈む
このままどこまでも、一緒に。