「しょーよー!」
「待って!今行く!」
いってきます!と声を上げながら飛び出してきた翔陽は、そのまま私の手を取って走り出す。
「待って待って待って!はやいはやい!」
ぐいぐい引っ張られて足がもつれそうになる。翔陽はそんなことお構いなしとばかりに早く早く!と笑う。
今まで私を待たせてたのは誰だよ、まったく。
少し走ってたどり着いたのは近所の公園。その一角の残雪。
遅い雪にはしゃいで作った雪だるまが、中途半端に溶けて傾いていた。
「あーあ、やっぱ溶けてんなー。」
「しょうがないよ。あったかいもん。」
「だなー。」
見ている間にも、顔がぐじゅぐじゅになっていき、頭に乗せていたバケツが落ちて音を立てた。
「翔陽、春がくるよ。」
「おう。」
「高校、楽しみだね。」
「…おう!」
翔陽がずっと前から言っていた、烏野高校に今年も二人で通うことができる。
これから彼のバレーボールが見れるのかと思うと今から楽しみで楽しみで仕方がない。
シャーベット状の雪を蹴って、翔陽が笑う。
飛び散った半透明がキラキラと光って消えた。
雪だるまが溶けるから
もうすぐ春がくるよ、