「…。」
鬼太郎ヘアーの学生君(多分)は、目の前に置かれた珈琲と抹茶ケーキのセットと私の顔を交互に見てから、おずおずと口を開いた。
「…あの、」
「な、何ですか?…あっ、もしかして抹茶苦手とか?!ごめんすぐ変えてもらいま、」
「ちょちょちょ、違いますってば!」
「うおっ。」
すいませーん!と店員を呼ぼうとして挙げた手を掴まれて強制的に下ろされる。
「こんなに、奢って貰っちゃって良いんですかって言おうとしただけなんですっ。」
「あ…え?」
「たかが小石ひとつでケーキまで…。」
「いやいやいや。たかがじゃないよ。小石なんて一大事だよ。下手したら怪我してたからもしれないのに…。」
「怪我なんて。ぼく、頑丈ですから。」
「いや、そういう問題じゃなくてですね。」
駄目だ埒があかない。
私は口を噤んで、良いから食え、とフォークを手渡した。
「…それじゃ、いただきます…。」
そう言って彼はケーキにフォークを突き刺した。
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