見捨てるつもりだった
偶然迷ってしまったのならまだしも、わざと迷い込みにくるやつなんて、見捨てるつもりだった
誰から聞いたのか知らないが、私の名を呼びながら背の高い竹の群れの足元でうろうろする小さな影を横目で見ていた
見捨てるつもりだった
だったのに
「きゃあああっ」
「…っ、ああもう!」
頭を抱えてしゃがみ込んだ少女が恐る恐る顔を上げる。小さな手から零れ落ちた花が縮れて崩れる。
黒く潤んだ大きな瞳が、私を映してきらりとひかる。
私は今、どんな顔をしているんだろうか
こんなに怖い想いをして、もう二度とこの子が来なければいいと思った