minor | ナノ








「十代十代」
「あんだよ」

肩をパシンと叩けば不機嫌そうにそう返された。

「十代、殴って」
「はぁ?急になんだよ。嫌だぜ」
「じゃあ殴らせて」
「嫌だ」
「ケチ」
「ケチじゃねーよ」

じゃあ、もう、いい。
万丈目に頼むからいい。

そう言って行こうとすれば、十代に腕を引かれて阻止された。

「何」
「お前って本当に素直じゃねーよなぁ」
「うるさい」
「はいはい」

ぎゅう、と抱き締められる。もっと強く、と言えば苦しいくらい圧迫感と、十代のにおい。

もっと。もっと。
もっともっともっと。

少し高めの体温と、頬を擽る茶色の髪と、私を捕まえる細くて綺麗な指と。

少し痛いくらいが丁度良い。

「十代」
「なんだよ」
「十代十代十代」
「はいはい」

呆れたような、それても優しくていつもより少しだけ低めの声が降ってくる。

ぎゅう、と力が強くなり、骨が軋むような気がした。

痛みで目尻が熱くなる。そうして。それで。これでやっと、私は一粒涙を零すことができるのだ。





私に痛みを頂戴な




こうやってまた十代の優しさに甘えてしまう自分自身なんて死んでしまえ。