「うわああああ!」
「このオッサンアホだ。」
「こんなんが上忍で木ノ葉隠れは大丈夫なのか。」
「オッサン…。」
●雑魚忍者貞子(ハツ君)に散々追いかけ回されたオッサンは、いつの間にか仕掛けられていたコウキ君の罠にモロ引っ掛かっていた。
身体をワイヤーで拘束され、さらには起爆札がベタベタと張り付けられている。
さっきまで貞子にビビっていた(多分あれは素だと思う)姿はどこへやら、腕を組んで仁王立ちするコウキ君は完全に悪役の顔をしていた。
「学年四位なめるなよ!」
「離せ!貞子が来る!」
「怯えすぎだろこのオッサン!」
うわああああ、ともがくオッサン。起爆札が見えていないのだろうか。死ぬぞ。
兎に角動きが止まっている今がチャンスと、私はオッサンの背後へ回った。そしてワイヤーと起爆札の隙間からはみ出た紐を掴んだ瞬間。
「あ゛あ゛あああ!!!!」
貞子が現れた。
「ぎゃあああああああ!!!」
「うわああああ!!!」
カチッ
「えっ?」
瞬間、目の前が閃光と熱で塞がれた。
「――…!…#名前1#!」
「はっ!」
目を開けると、そこには心配そうなハツ君の顔があった。近い。
ハツ君を押しのけて身体を起こすと、そこには大きく抉れた地面と、ニコニコ笑うオッサンがいた。
「あれ?」
演習は終わったんだろうか。
ガサガサと茂みを掻き分けて、両手いっぱいにワイヤーやらクナイやら起爆札やらを抱えたコウキ君が現れる。
「あ、#名前1#ちゃん起きたの?痛いところとかない?大丈夫?」
「大丈夫だからそれ以上こないで。怖い。」
「ごめんごめん。」
コウキ君はそれらを全部地面に置いてから、私に近付いて手を差し出してきた。
素直に掴んで立ち上がると、ハツ君も隣に並ぶ。
「で?」
口を開いたのはハツ君だった。
「課題は失敗。下忍認定試験に落ちた俺達は三人仲良くアカデミーに戻るってことでいいんだよな?」
ああ、失敗したのか。
紐を掴んだ感触はあったんだけどなぁ。
オッサンはニコニコ笑ったまま、首を振った。
「いやいやいや。アカデミーに逆戻りなんてそんなことはないさ。」
「はぁ?」
「本来この試験はチームワークを見るものなんだよ。だからその点においてはお前らみんな合格。」
「じゃあ、」
「ただし!」
大きな声に、私達の肩が跳ねる。
「チームワークはいいものの、如何せんお前らは弱い!弱すぎる!てゆうか消極的過ぎるだろ!何で誰一人として体術も忍術も使わないんだよ!罠て!貞子て!」
「俺一応ケッケーゲンカイ使ったじゃん。」
「違うの!だってお前髪の毛伸ばしただけじゃん!いやまあすごいんだけど!ちがくて!なんかこう…オジサンが見たかったのはもって違うアレなんだよ!」
「めんどくさいなこのオッサン。」
お前ら忍じゃねぇのかオラァ!と騒ぐオッサンに、ハツ君とコウキ君と私は顔を見合わせる。
「で、結局僕らはどうすりゃいいんですか、オッサン。」
「ああええとね、つまりアレだ。お前らは下忍候補ってことで。」
「「「下忍候補?」」」
下忍候補とは、素質はあるのに実力が足りてないような忍が上忍の指導の下修行を重ねたり、Eランク任務を受けたりして力を身に付けていく、というものらしい。
聞いたこともないぞそんな制度。
ハツ君もコウキ君もすごく嫌そうな顔をしている。
「じゃあ、まあ、そういうわけで!明日の朝七時にアカデミー前に集合な!」
「お腹空いたー。」
「なんか食べに行く?」
「俺ラーメン食べたいし。」
「じゃあ一楽行こう。」
「話聞いて!」
オジサン泣いちゃう!!とハンカチを噛み締めるオッサンをシカトして、私達はラーメン屋に向かった。
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