「あ、あああ明日香…やっぱり無理だってば…!!」
「無理じゃないわ。しっかりしなさい」
「で、でも」
「でも、じゃない!」
「うひっ」

学園一の美女に怒鳴られて思わず情けない声が出てしまった。私の数少ない友人である彼女はその細い腰に手を当て、私をキッと見据える。気圧されて視線をさ迷わせる私はさぞ滑稽だろう。

「ほら、十代が困ってるじゃない。ちゃんと挨拶して」
「うう…よ、宜しくお願いしま……」
「声が小さいっ」
「うわあああ」

「……なんだコレ」



▼かんすと!



事のはじまりを簡潔に説明します。タッグデュエル大会がはじまったので明日香とタッグを組んでもらおうと思ったら断られて代わりにデュエルアカデミアのヒーローである遊城十代君を紹介された。終わり。解せぬ。

オシリスレッドでありながら、その高いデュエルセンスと圧倒的ドロー運でアカデミアの危機を幾度となく救ってきた遊城君。授業のサボリや赤点もあるが、それを補って余る程の功績を彼は持っていた。しかもイケメンである。

対して私は中等部の時からドロップアウトギリギリの底辺をさ迷っている。テストはクソ、実技もカス。タッグデュエルだと多少勝率もあがるが、それは結局パートナーの素晴らしいデュエルタクティクスに助けられてのことなので、要するに私の力ではない。こうやって並べてみるとどうして自分が未だにこのデュエルアカデミアに通っていられるのかが心底謎である。いいところが皆無過ぎて逆に笑えてくる。いや、全く笑い事じゃないけど。

まあそんな感じだ。中等部からの同級生たちにアカデミアの恥とも言われた程のドベ女と、皆のヒーロー遊城君がタッグを?組むだって?烏滸がましいにも程があるだろうよ。

そりゃあ明日香だってアカデミアのブリザードプリンセスと囁かれる程のナイスバデーと洗練されたデュエルタクティクスを持つ有名人だが、そこはほら、中等部時代からの友人だから多少は気が置ける。私の精神的にもダメージは少ない。勿論明日香が遊城君と組むと言われても頷ける。二人は普段からも仲がいいし、デュエルの実力も釣り合っている。なにより絵になる。

それが

どうして

こうなったと言うのだ。


遊城君も遊城君だ。断れよ。嫌なことは嫌だってはっきり言わないとこのプリンセスはゴリゴリ押し進めていきますよ。今だってほら、ノーと言えない私の腕をギリギリと握っている。痛い。拒否権をくれ。

私が黙ったまま俯いていると、明日香が溜め息を吐いた。

「ごめんなさいね、十代。彼女ちょっと…人見知りなのよ」
「これちょっとってレベルか?」
「…この子アナタのことを凄い人だって思って萎縮してるのよ。暫くすればきっと慣れてくるわ」
「ふーん…」

ああ、怖い。絶対に心の中でボロクソに言われている。こんな教室の隅に落ちてるホコリみたいな奴と組むなんて嫌だと思ってるはずだ。今すぐ崖から飛び降りたい。冷や汗がやばい。喉が乾いて死にそうだ。

「まぁ、なんていうか…、よろしくな!」
「は…はい…っ」


こくこくと頷く私に、明日香が満足そうに肩を叩いた。
















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