目を逸らせば一瞬で視界から消える。
気が付けばすぐ隣に立っている。
そんな私についたあだ名は、『幽霊』でした。
はじめてその名で呼ばれた時は妙に納得してしまって、それでももしかしたら自分は本当に幽霊なんじゃないかと、丸々三日間悩みました。

まあ、いい思い出だよね。




●雑魚忍者




「団子うまー。」

私は今、団子を食べながら里をのんびり散歩していた。
オッサンには悪いけど、正直見付かる気がしない。
何もしなくてもかくれんぼは、昔から大の得意だ。

「さて…と。」

これからどうしようか。

コウキ君はきっと演習場辺りに隠れているだろうし、ハツ君は…知らないけど、何とか上手くやるんだろうな。多分。

一方私はやることがない。
取り敢えず喉が渇いたので、甘栗甘で一服しよう。それがいい。

「いらっしゃいませー。」

にこやかに笑う店員さんに定番の甘栗と冷たいお茶を注文して、一番奥の席に座る。気配は消したままでも、店員さんはちゃんと品物を運んできてくれるので本当にすごいと思う。

甘栗の皮をのんびり剥きながら、お茶をすする。あー、おいし。

「げっ、ここも満員じゃねーか。」
「えー、じゃあ食べれないの?」
「諦めろ、チョウジ。」

あ、奈良君と秋道君だ。ってことは第10班かな。

「あっ、チョウジー、あそこの奥の席空いてるわよォー。」

やっぱり。山中さんだ。私は彼女があまり得意じゃないんだよね。…まぁ、仕方ないか。もうこっち来ちゃったし。

「ラッキー、ボク達ツいてるね!」
「そうかぁ?」
「つべこべ言わずに座んなさいよ!」
「めんどくせぇ。」

普通に話しながら座った。三人。本当に私に気付いてないんだな。こんな至近距離に居るのに。

仕方ない。

「お久し振りです。」

「「「うわぁ?!」」」

甘栗片手に挨拶をすれば、三人揃って飛び上がった。ちょっと驚きすぎじゃあないですかね。

「いいいつから居たの?!」
「失礼な。最初からいたよ。」
「相変わらずの幽霊具合ね、アンタ…。」
「ははは。」

別に好きで幽霊してるわけじゃないんだけどなぁ。

まぁ折角だからと色々な話をする。
曰わく、第十班の皆は着々と経験を重ねてっているのだとか。
任務中に秋道君が拾い食いしてお腹を壊した話、見事な連携プレーでペットを捕まえた話。
ペットの捜索なんかはわりとしょっちゅうしてるんだけど、まあ黙っておく。

そんなこんなで暫く時間を潰してから三人に別れを告げてまた里をぐるぐる徘徊する。が、オッサンが来る気配も全くなく、結局家に帰って寝ることにした。

ハツ君、コウキ君。頑張って下さい。






次の日。
いつもの演習場に行くと、ふてくされて丸太の上に座っているハツ君と、それを見てケラケラ笑っているオッサン、それから私に気付いて苦笑しながら手を振ってくるコウキ君が居た。

いやだなぁ。あの輪に参加したくない。

溜め息を飲み込んで近付くと、オッサンに「お前何処にいたの?!」と言われた。いや、普通に家で寝てましたけど。

「ま…マジか。オジサン一応お家も見て回ったのにわかんなかったよ。」
「……マジか。」

思いっきりベッドで寝てたのにな。

「それで、勝負はどうなったんですか?」
「ん?ああ。一勝二敗だな。オジサンが捕まえられたのはこいつだけだし。」

そう言ってハツ君の頭を撫でようとして、思いっ切りはたき落とされるオッサンの手。バチンってめっちゃいい音したぞ今。

「ということは、ハツだけが修行ってことですか?」
「え?そんなわけないじゃん。」
「え?」
「え?」

キョトンとする私達に対して、同じくキョトンとするオッサン。

「お前らスリーマンセル。一心同体。仲間が捕まったんだから連帯責任に決まってんだろ?」
「………マジかよ。」


こうして私達は、オッサン特製特訓メニューをこなす羽目になるのでした。
ちゃんちゃん。













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