嫌われてるシンドバッド




「やあ、#名前1#」
「うわ、出やがった」

どうしても行きたい所があるからとゴネるシンに付き合って城下にある大衆食堂にやってきた。すると注文を取りにやってきた一人の少女にシンが声をかけたのだ。シンドリアの王であり、かつ良くも悪くも女ったらしと名を馳せるシンである。彼に声をかけられた数多くの少女が頬を赤く染めるのを、今まで何度も目にしてきた。

それが、だ。

「ははは、客に向かってその態度はあまり良くないんじゃないか?#名前1#」
「申し訳ございませんお客様。出口はあちらでございます」
「そんな他人行儀な話し方はやめてくれ。俺と君の中だろう?」
「今すぐ天に召されてください王様」
「はははは、やっぱり君は面白いな」
「あはは、私はすごーく不愉快でございます。今すぐにお帰りください」

目の前の少女はあろうことか、客でもあり王でもあるシンドバッドに向かってまるで生ゴミを見るような目を向けて見せたのだ。いつの間にか自分の口がぽかんと開いていたことに気付き、ハッとして閉じる。何か言おうと思案しようとすると同時に、さっとシンドバッドが手で制してきた。壮絶な睨み合いの末、メニューをテーブルに叩き付けて厨房に消えた彼女をうっとりと見つめながら、我が王は言った。

「彼女は極度の恥ずかしがり屋なんだ。可愛いだろう?」

ひゅんっ、と飛んできたバターナイフがシンドバッドの手元すれすれに突き刺さった。

「これも照れ隠しなんだ、ジャーファル」

王よ、私は違うと思います。