午前9時。


私達は跡部君とやらが用意してくれた合宿所(というより正直別荘に近い)の前に立っていた。すごいとか通り越して最早無駄だとすら感じさせる程の規模に、私は成る程、と呟いた。

幸村君が言ってた通りに、跡部君は大金持ちのようだ。

最寄り駅に送迎バスを出してくれる時点で普通じゃないとは思っていたけれど、これは納得せざるを得ない。


「いいか?曉」

「うん」

「絶対に跡部と目ぇ合わすなよぃ?」

「うん?何で?」

「何でも」

「うーん」


先程から丸井君が一所懸命伝えてくることの意味が分からず首を傾げていると、ニヤニヤ笑う仁王君が後ろから私の肩に腕を回しながら現れた。


「実はの、跡部はメデューサの子孫であいつの目を見ると石になってしまうんよ」

「…嘘だよね?」

「いや、本当じゃ。のう、ブンちゃん」

「そうそう。仁王の言うとおりだぜぃ」

「嘘でしょ?!」


メデューサの子孫だなんてそんな馬鹿な。でも仁王君も丸井君も真面目な顔してるしな…。多分メデューサではないにしろ、何かがあるんだろう。ここは大人しく忠告に従おう。

ここまで3秒で考えてから二人に「じゃあ、気を付ける」と返す。満足そうに頷く二人を、近くに居た幸村君と柳生君が呆れたような顔で見ていた。




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