『童実野美術館館長死亡』

そんな文字がテレビ画面の中に浮かんでいた。は?え?マジで?混乱する頭でアナウンサーの声を必死に聞く。ニュースによれば、館長はオフィスで死体となって発見されたらしい。死因はショックによる心臓破裂だが、検死官の話ではそのような死に方は通常では有り得ないという。『ファラオの墓を暴いた呪いによるものか』なんて言葉を添えてニュースはしめくくられた。まじかよ。死亡推定時刻は閉館直前と言っていた。

「………。」

いやいやいや。私は何も見ていない。別に閉館時間直前になんだか電波なやりとりをしているシャーディーさんとか武藤君とか何一つ見てない。もう一人の武藤君が云々なんて話は決して。断じて。頭を振って記憶を掻き消す。それに流石のクレイジー武藤君だって、こんな警察やニュース沙汰になるほど大っぴらに何かすることなんてないはずだ。多分。……出来ないよ、ね?どうか出来ないでありますように。頭の中でそう繰り返し念じていると、不意に携帯が震えた。めっちゃビビった。思わずテーブルに足をぶつけた。ちくしょう、誰だよ。携帯電話を見れば海馬瀬人の文字。はい来ましたよ。社長ですよ。何だか嫌な予感がしながらも通話ボタンを押せば、まず一番に遅いと文句を言われた。切るぞコラ。

「次の土日に予定は入っていないな?」
「何故ないと決め付けているんですか。いや、ないけども」
「ならいい。貴様に用がある。空けておけ」
「えええ。なんだかよくわかんないけどわかったよ。空けとけばいいんだよね?」
「迎えを寄越すから家にいろ」
「迎え?!い、いらないよ。KCに直接行いくよ」
「貴様のどうでもいい理由に時間を費やす暇はない。いいからその日は家にいろ」
「ちょ、海馬く」

ガチャン

強制的に終了した通話。ちくしょう。土日は絶対に家を出よう。そうしよう。

「……。」

海馬君からの謎電話のお陰でさっきまで色々考えていたことが何だかどうでもよくなってきた。携帯をテーブルに置いてテレビに目をやれば、ニュース番組も終盤で、動物園でパンダの赤ちゃんが産まれたとかなんとかしゃべっている。

今日はもう寝よう。

テレビの主電源を切る。真っ暗になった液晶に、遠い目をした自分が映っていた。











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テーマ「人外ファンタジー」
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