「15…20……あれ、コウキ君、これ判子押されてないよ」
「えっ?ちょっと見せて。……うわぁ、本当だ」
「どうしよう…テマリさんもう帰っちゃったよね」
「いや、まだ間に合うだろ」
「よし、行こう」



●汎用忍者



ハツ君のダウンジングを頼りに歩いていけば、シカマル君とテマリさん、それから懐かしい金髪を見つけた。

「あの、」
「うわああっ?!」

ポンと肩を叩いてみれば、その人物は面白い程に飛び上がった。相も変わらない反応に小さく笑う。

「久し振り」
「あ…っ、えっ?」

ヒラヒラと手を振っても反応は芳しくない。あれ?まさかとは思うけど、私のこと忘れちゃってたり…

「おー、ナルトぉ!久し振りじゃん!」
「うわー、背ぇ伸びたなナルト」
「えっ?えっ?!お前ら…ハツとコウキか…?」
「おー」
「ってことはこいつが…まさか…」

ハツ君とコウキ君を見て何かを察したらしいナルト君が、ふるふると揺れる指で私を指した。

「"幽霊女"の曉ヒビキだよ」
「マジかよ!!」
「わかんなかった?」
「前と全っ然違うってばよ!」

そ、そんなにか?ちょっと寂しくなって眉を下げれば、ナルト君は薄く頬を染めながらポツリと呟いた。

「その…すげー可愛くなったってばよ」
「え…」

思わず固まってしまう。えっ、今この人何て言った?わ、私のこと可愛くなったって?私のこと、可愛くなったってばよ?!みるみるうちに自分の顔が熱を持つのが分かる。それを言ったらナルト君だって、この三年で背も伸びたし顔も凛々しくなってなんというか、大人っぽくなった。あー、とか、うー、とか唸りながらも、ナルト君もカッコよくなったね、と返せば彼はカッと赤面した。なんだこの青春的なやり取りは。

「させるかこんちくしょう!!」
「ぐおはっ!?」

ハツ君の跳び蹴りがナルト君の背中にヒットした。まとめて吹っ飛んでいった二人を見送りつつ、テマリさんに判子を貰うコウキ君の下へ向かった。

「テマリさん、さっきぶりです」
「ああ」
「デートの邪魔しちゃってすいません」
「な…っ!」
「だから違ぇっつってんだろめんどくせぇ」
「こらシカマル、めんどくさいとか言うんじゃないよ」
「うるせぇ全裸忍者」
「シカマルお前後で覚えとけよ」

笑顔のままシカマル君を威圧するコウキ君怖すぎる。テマリさんを見ると、二人の様子が面白いのかクスクスと笑っていた。渡された書類を確認したコウキ君が、いまだにナルト君へ攻撃を続けるハツ君へ声をかける。

「ハツ、もう行くよ。まだ仕事残ってんだから遊んでないで」
「えぇー」
「えぇー、じゃない」

仕方ない、という風にナルト君から離れてこっちに戻ってきたハツ君は、流れるような動作で私の肩に腕を回した。なんだよ。絡み方めんどうだよハツ君。

「兎に角!今更ヒビキの魅力に気付いたっておせーんだからな!」
「は、はぁ?!」
「自来也様に修行つけてもらってるからっていい気になるなよ!この下っ端!下忍!」
「ハツ、言い過ぎ」
「ひでぇってばよ……って、ん?下っ端…ってことはお前らまさか…!」
「ああ」

ナルト君の言葉に、シカマル君がニヤリと笑う。

「言っただろ?『同期で下忍はお前だけだ』って」
「ええええええええ!!!」

驚きすぎだろ。私達を一体何だと思ってるんだナルト君は。

「この前中忍になったんだよ」
「…っつっても、実力的にはまだ下忍かそれ以下なんだけどなー」
「書類整理とかよくやるから、下忍のままだと都合悪くて」
「忍のくせにほぼデスクワークとは是如何に」

ケラケラと笑う私達三人をポカンと見つめるナルト君。そんなにショックだったんだろうか。

「つーわけで、俺達まだ仕事あるから行くわ。またな、ナルト」
「今度食事でも行こうよ。奢るよ」
「またね、ナルト君」

ひらひらと手を振ってから地面を蹴る。さあ、また書類の続きだ。








雑魚忍者三人組は下忍候補時代に中忍選抜試験の運営に貢献し、その後もイベント事の手伝いやらなんやらしてたらいつの間にか書類を扱うようになっていました。しかし下忍(候補)のままだと書類処理の際色々と不都合なので、試験を受けて紙面上はしっかりと中忍になりました。実力は伴っていません。隠密系任務だけ成功率が高い。そこそこ動ける上に基本的に低姿勢で使い勝手が良い。おめでとう!雑魚忍者から汎用忍者に進化した!ちなみにヒビキは地味に可愛くなった。三年経つとこんなかんじ。リクエストありがとうございました!

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -