彼の後をテクテクついて行き、辿り着いたのは裏庭的なところだった。彼はある一点で立ち止まり、こちらを振り向いた。
「なんか、地面掘るものあるか?」
「ほ、掘る…?」
「…何でもねぇ」
「あっ、まっ、あのっ、スコップならあります!」
「何で持ってんだよ」
いざという時のためですね。はい。
私が小さなスコップをリュックから出して手渡すと、彼はしゃがみ込んで地面を掘り起こしはじめる。特に何をするでもなくそのようすを眺めていたら、ガツンと何か堅いものを叩く音がした。
「……」
どうやら缶の箱みたいだ。彼はこびり付いた土を手でパッパッと払ってから、蓋を開ける。中に入っていたのは、
「…トロフィー…?」
「…ほらよ」
「えっ?ちょっ、ち、うわ…っ」
ポイッと投げ渡されたそれを取り損ねそうになって慌てて掴む。彼はそんな私を放置して、スタスタと歩いていってしまった。
「な、なんなんだ…」
取り敢えずトロフィーは持ったまま、穴を塞いで地面を均す。それから私もまた屋内に戻った。気ままな撮影会の再開である。彼は多分トイレかなんかだろう。水流れるのかは知らないけど。
しばらくパシャパシャ写真を撮りながら探検をする。最後に、今夜のメインディッシュであるプールへと向かう。が、
(話し声……)
幽霊…?いや、私霊感ないし多分さっきの人だろう。いやでも何で?恐る恐る覗いてみると、さっきの人と、他に知らない男子が三人程増えていた。しかも四人中二人が何故かパンイチ。さっきの人はパンイチ組の一人にだった。ええええ。
「行くぜ!ハル!」
さっきの人の声でパンイチ組が走り出す。おい、ちょっと待て。まさかとは思うけど飛び込む気か?!
「レディ……ごっ、?!」
「水…ないね」
デスヨネー。
「だから止めとけって言ったのに…」
「…ちっ、つまんねー」
さっきの人がそう言いながら服を拾ってこちらに歩いてくる。目が合うと眉をひそめられたので慌ててトロフィーを差し出すと、彼は受け取ってから後ろの三人に見えるように掲げた。私は何となく廊下の端によって隠れてみる。今シリアスパートっぽいし。部外者は黙っておこう。うん。
「そういやお前ら、これ、見つけに来たんだろう」
「あっ、トロフィー」
「俺はもう要らねーから。…こんなもん」
とか言ってわざわざ私のスコップ使って掘り起こしたのあなたじゃないですか。なんて言わないよ。うん。
直後、彼はあろうことかトロフィーから手を放した。勿論重力に従ってそれは地面へと落下していく。
「えっ?!ちょ」
「うぇっ!?」
「ちょ、おま」
声を出しかけて口を閉じる。カシャンと音がしてトロフィーが転がった。彼は歩きながら私の頭をど突いた。
「行くぞ」
「えっ、まだ写真撮ってな…」
「いいからさっさとしろ」
「何なんですかもう…」
ギロッと睨まれれば反論できるわけもなく。私は仕方なく彼の後を着いてプールを後にした。あああ、一体何のためにここまで来たのか。間を置いて、背後から悲鳴が聞こえたけれどシカトすることにした。
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