近所にあるスイミングクラブが近々取り壊されると聞いたのはついさっきのことだ。たまたま屋上へ続く階段の下を通りがかったら、そう話す男の子の声が聞こえた。
馬鹿な!あんなに素晴らしい廃屋が取り壊されるだと?!
近所だし何時でも行けると思って後回しにしていたのが裏目に出たか。いや、大丈夫だ。まだ間に合うじゃなかいか。
ガタッと椅子から立ち上がると、友達が不思議そうな顔で私を見上げてきた。
「…どしたの?」
「ちょっと、電話してくるね」
「おー、いってら」
廊下に出て携帯を開く。件のスイミングスクールを検索して管理者を確かめる。それから管理者に電話し、サクサクっと中に入る許可を頂いた。硝子が割れてて危ないから注意するようにという事と、鍵は開いているという事を教えてもらい、お礼を言って通話を切る。
家に帰ったら早速準備しなくちゃ。
「あは、」
廃プールなんて滅多に見れないからテンションが上がってきた。ニヤニヤしたまま教室に戻ったらまた不思議そうな顔をされた。
決行は、今夜である。
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