プチン、とモニターの電源が入り、雑音混じりに声が聞こえた。



「あー、あー。マイクテスッ、マイクテスッ!校内放送、校内放送…!」



底抜けに脳天気で耳障りな、声。



「大丈夫?聞こえてるよね?えーっ、ではでは…」



本能的に恐怖を感じて、思わず隣にいた苗木君の服の袖を掴んだ。



「えー、新入生のみなさん…今から、入学式を執り行いたいと思いますので…至急、体育館までお集まりくださーい!…ってことで、ヨロシク!」



プチン、とまた唐突にモニターは沈黙する。一瞬の間。そして、誰かが「は…?」と声を漏らした。



「な、なんなの、今の…」


「俺は先に行くぞ…」


「ちょ…ちょっと!なんで、いきなり行っちゃうの!?」



江ノ島さんが言っても十神君は知らん振り。それどころか、皆ぞろぞろと玄関ホールを後にしていく。


いやだなぁ。行きたくないなあ。



「本当に…大丈夫なんですかね…?」


「今の校内放送にしたって、妙に怪しかったしね…」



二人の言う通りだ。うんうん、と頷いていると、霧切さんが「でも、」と口を開いた。



「ここに残っていたとしても、危険から逃げられる訳じゃない…。それに、あなた達だって気になるでしょ?今、自分達の身に何が起きているのか…」


「先に進まぬ限りは何もわからぬままという事か…ならば、行くしかあるまい」



さくらちゃんの言葉に、残った皆も体育館に行く流れになったみたいだ。うぐぐ…やっぱり行きたくない…。


次々と人が減っていく中、まるで根が張っているみたいに動かない私に、苗木君が声をかけてくる。



「大丈夫?」


「……いきたくない」


「え?」


「ううん、何でもない。いこう」



無理して口角を上げれば、苗木君は困ったような顔をして手を差し出してくれた。



「一緒に行こう?」


「…ありがとう」



そして、私達も玄関ホールを後にしたのだった。











 






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