「…ん?」



目を開けると、そこは見知らぬ教室だった。机に突っ伏していたせいか、額がジンジンと痛みを訴えてくる。ひとまず伸びをすると背骨が鳴り、欠伸が出た。生理的に出た涙と一緒に目を擦りつつ周りを見回す。



(…あれ?)



何かがおかしい。


心の中で誰かがそう訴える。囁くように、何かが何かが、と。違和感の正体を探すように、私はゆっくりと席を立つ。そもそも私はいつの間に寝てしまったんだろうか。それすらも分からない。意味も分からない。教卓に描かれた校章を見る限り、ここが希望ヶ峰学園なんだろうということは何となく察した。と、いうことは…?



(学園長と話してる最中に居眠りかましてここまで運んで貰ったってこと?!うっわ、恥ずかしい……!!!)



そんな結論に至って一人で悶える。転入の手続きだけでどんだけ疲れてんだよ自分。ぎゃぁぁあ、恥ずかしすぎてもう顔合わせらんない。ごめんなさい学園長。私体重重かったでしょうに。ああ、顔が火照ってとても熱い。


風が欲しくて窓を開けようと振り返る。しかし、私の動きはそこで停止してしまった。



「……え?」



本来なら空を見せるはずのその窓は、分厚い鉄板が大きな留め具で打ち付けられ、頑丈に封鎖されていた。恐る恐る手で触れ、引っ張ってみてもびくともしない。意味が分からない。思わず後退って机にぶつかったところで、ふと視線を感じる。顔を上げると、そこには何故か監視カメラがあった。…監視、カメラ?



「…何で教室に監視カメラなんか、」



希望と称される生徒達の授業風景を、一瞬も逃さずに記録したいとか、そういうことだろうか?…いや、違うだろう。これはどちらかというと、名前の通り、此方をジッと監視しているみたいだ。何だか無性にゾッとして、私は監視カメラから目を逸らす。


ずっとここに居るわけにもいかない。


私は監視カメラの視線から逃げるように教室から飛び出した。ら、




「うわっ?!」


「ぎゃふっ!」



漫画にしたって余りにもお決まりなイベントに遭遇してしまった。今すぐ家に帰りたい。












 






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