ざわざわと騒音。
様々な声、様々な音、様々な歌。
耳に入る音全てが不快だ。
ミューズが語る度に、メフィスト様がその声に耳を傾ける度に、不快な音が強くなる。
ざわざわと。
「ファルセット」
僕を呼ぶ声。
よく耳に馴染む声。
けど、僕が好きな声じゃない。
低くて、不快。
目の前にいたのはよく知る顔。
仮面を付けた僕。
髪が長い僕。
僕が知らない僕。
「馬鹿なファルセット。トリオは楽しかったか?」
楽しい?
いろんなことをした。
いろんなものを食べた。
喧嘩ばかりした。
ああ、それがなぜか楽しかった。
「世界を不幸にしようとしている奴の台詞とは思えないな。やはり、お前は……」
トン、と肩を押される。
浮遊感。
ゆっくりゆっくり、確実に落ちていく。
「もう、用済みだ」
無音の世界に呑まれてく。
ああ、不快な音が消えていく。
でも……
大好きな音も消えていく。